
待ちながら暮れてゆく店お話の中ならそろそろ子狐も来る
奥山 恵
先週ブログに書いた活動で集まった絵本は、無事に宮城県、福島県の避難所へ送られたそうだ。「被災地文庫」として読まれた後は、公立図書館づくりに役立ててもらえるという。とてもうれしい。
おとなにとっても、本を開いてその世界に入り込むのは楽しい時間だが、子どもにとって、本や「お話」は心の栄養になるものだ。怖い思い、悲しい思いをしただけに、いっそう大切な糧になると思う。
この歌は、昨秋、千葉県柏市に児童書専門店を開いた私の友人の作品である。長年、定時制高校の教師として働き、やっと念願かなって店をオープンした彼女だが、お客さんを待っているうちに日が暮れてしまうときもあるのだろう。
人間のお客さんが来ないのは、本当は困った事態なのだが、この店長さんはふと「こんな日は、子狐が来るんじゃないかしらん」と半ば期待しているようなのが可笑しい。ちょっと変わった子が来たら、差し出されたお札には気をつけないと、葉っぱかもしれない……。
彼女のお店の名は、「ハックルベリーブックス」(http://www.huckleberrybooks.jp/)。JR柏駅から歩いて10分ほどのところにある。オープン間もない頃に訪れたけれど、とても心地よい空間だった。また行きたいな、被災地に送りたい本がたくさんあるだろうな、と思う。
☆「かりん」2011年3月号