
毒をもつオオヒキガエル島に増えあめりかーのようにしぶとし
夏本番も近い感じの石垣島である。気温が高くなり、日差しも強くなってきた。そして、昆虫諸君の登場に伴い、それを食糧とするヤモリ、カエルの諸君も元気に姿を見せるようになった……。
以前、近所の女性陣とおしゃべりしていて、「あたし、ここの冬って意外に好きだなあ」「あ、私も」「そうそう!」と盛り上がったことがある。なぜ冬がよいのか。それは「虫が少ない」「湿度が低い」からなのだ。夏は、虫とそれを食べる小動物の季節であった。
そういうわけで、わが家にも毎晩お客さまが来る。大きなカエルである。家の灯りに呼び寄せられる虫を狙って、窓の近くに陣取るというわけだ。まあ、普通のカエルならよいのだが、中には毒をもつ外来種のカエルもいて困ってしまう。
オオヒキガエルは中南米原産だ。実はサトウキビの害虫駆除のため南大東島へ持ち込まれたものが、いつの間にか石垣島へ入り込んだのだという。襲われると背中から毒液を出すので危ない。このカエルを食べた犬が死ぬこともあるという。環境省によって「特定外来生物」に指定されており、見つけたら放置せず「処分」しなければならない。
先日、昼間にこのカエルと遭遇したが、相棒も私も「処分」する度胸がない。市役所に電話して、捕獲しに来てもらった。職員の方は、内心「しょうがないなぁ」と思ったのであろう、にこにこしながら「次からはよろしくお願いしますね〜」と言っていた。
人間の都合で太平洋を越えて連れてこられたカエルも気の毒だな、と思う。ともあれ、夜のお客さまに関しては、何も見なかったことにしている私たちである。
☆松村由利子歌集『大女伝説』(短歌研究社、2010年5月)