
先週末の台風17号は、私にとって初めての大きな台風だった。
移り住んで以来、石垣島にいくつかの台風が訪れたが、いずれもかすめた程度。唯一、大きかった昨年の1つが来た際は、ちょうど東京へ行っていて体験することができなかった。
今回も実は28日から30日まで福岡へ行く予定にしていたのだが、27日夜に翌日の全便欠航が決定し、張り切って台風に臨むこととなった。
私の住む地域は、市街地から車で30分というところで、買い物に不便というだけでなく、停電や断水といったライフラインが途絶えたときに復旧が遅いという実情もある。地元の人たちの語り草となっている、2006年の台風13号のときには、3日ほど停電が続いたという。
28日のお昼、隣の集落にあるパン屋さんに買い出しに行くと、すっかり顔なじみになった彼女が開口一番、「おふろに水もためておかないと!」と言うので、私の緊張度もさらに高まる。食パン2斤とバゲット、菓子パンを数個買って帰った。そして、浴槽に水をため、非常用のランタンやカセットコンロを出し、懐中電灯の電池を確かめ……。
沖縄在住の人のブログを読んでいて「台風太り」という言葉に出合ったときには、笑ってしまった。これは停電した場合に備えて、あらかじめ冷蔵庫の中にあるものを片付けることによって起こるのである。「あ〜、このアイスクリーム、今のうちに食べておかないと」「ヨーグルトも早めに食べないとなぁ」――かくして、台風が来る前にはちょっぴり栄養過多になるというわけだ。
台風17号が最も石垣島に接近したのは29日20:30頃だった。停電はその日の夕方から30日の夕方まで、ほぼ24時間で済んだ。停電するよりも先に、電話線が切れてしまったのだが、これは今(10月3日現在)に至るまで、まだ復旧していない。
塩に髪を強ばらせゐる木々に吹き今年十二度目の台風が来る
渡 英子
17号によって、わが家のバナナはほとんど倒されてしまった。他の木々も、潮風になぶられて葉が茶色になり、瀕死の状態である。海が近いので、この歌の「塩に髪を強ばらせゐる」という比喩には深くうなずかされる。
潮風にさらされるのは木々だけではないから、台風が去った後は、車の丸洗いが不可欠である。そのままにしておくと、小さな傷からどんどん錆びてしまう。それから壁や窓ガラス一面にこびりついた木の葉やほこりを高圧洗浄機で洗わないといけない。これも塩が含まれるので、放置していても自然に流れるということがないのである。
いろいろあるけれど、地震と違って台風は予測、対策ができるのがありがたい。回数を重ねるごとに、防災のノウハウも磨かれる。この島に暮らす限り、台風ともうまく付き合ってゆかなければならないのだと思う。
*渡英子歌集『レキオ 琉球』(ながらみ書房、2005年8月刊行)