2009年04月10日

桜餅

KICX2400.JPG

  わが妻に永き青春桜餅
                 沢木 欣一


 さくさく、ふわふわ、もちもち、ぱりぱり、ほくほく……。いろいろなおいしさがあるけれど、ことお菓子に関しては、私は「もちもち」派である。羽二重餅、安倍川餅、柚子餅などのほか、くるみゆべし、すあまも、このグループに入る。
 福岡出身の私にとって、桜餅も「もちもち」メンバーの筆頭だったのだが、東京へ来て驚いた。「これは桜餅じゃない!」。こしあんをクレープのような小麦粉の皮で包んだのが、東京の桜餅という。「だけど、もちもちしていないじゃない……」。粒あんを道明寺粉を蒸したものでくるんだ、わが桜餅は、「道明寺」と何やらしんきくさい名前が付けられているのであった。
 もちもちした桜餅は西の方、クレープ包みは東の方の桜餅だそうだ。これがどの辺で分かれるのか、やはり関が原というかフォッサマグナのあたりなのか、大いに気になるところだ。
 最近、スーパーで両方を同じ数ずつ入れたパックを発見した。東男と京女のようなカップルのために考案されているのかな、などと面白く思った。2タイプの桜餅があることが知られるようになり、東の方のタイプは「長明寺」とも呼ばれるらしい(おあいこである)。
 この句の「桜餅」は、どちらのタイプだろう。残念ながら道明寺ではなく、長明寺に軍配が上がるように思う。「わが妻」は、いつまでも少女らしさを失わない夢見がちな女性と読んだ。きれいなもの、愛らしいもの、またロマンティックな小説などが大好きな妻を、作者は時にからかいながらもいとおしく思っているのだろう。「永き青春」は、ほんのりしたピンクのブラウスをまとったような長明寺にこそ相応しい。

☆沢木欣一句集『塩田』(風発行所、1956年)
posted by まつむらゆりこ at 08:00| Comment(16) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
東京は桜の葉っぱごと食べるのがふつう(だって塩漬けになっているし)なのですが、福岡に行ったとき周りの人がせっかくの葉っぱをはがして食べているのでびっくりしました。桜餅が道明寺だったのはそんなもんかと思いましたが。
Posted by morijiri at 2009年04月10日 10:01
フォッサマグナって…フォッサマグナって…!!

そこで分けるの!?(爆笑!!)(痙攣)
Posted by Lucy at 2009年04月10日 11:01
素敵なご夫婦ですね!
ご主人の愛情が伝わってくるような歌です。
この奥様、幸せだなあ☆
Posted by もなママ at 2009年04月10日 17:43
ところで餅は、やっぱり太宰府の梅が枝餅ばい!<花より梅が枝餅!!!>

桜餅は、勿体のうて「お茶」のお呼ばれくらい、敷居の高きところにありまする…。

ですから、桜餅は由利子さんのような葉っぱ巻きの桜餅がしっくりきますなぁ。

最近気がつくことは、野菜に「季語」を感じれなくなってきたこと…(悲)

だからじゃあ無いけど…。私はTanzenの気持ちよさに、季節を感じ始めました…<複雑系>
Posted by ErwinRommel at 2009年04月10日 22:05
morijiriさん、
えっ、私は葉っぱも食べますよ♪
これは家族の影響が大きいのかな?

Lucyさん、
いやいや、フォッサマグナは偉大な存在ですよ、あなた。

もなママさん、
ね。こんなふうに愛されてみたいですよ。
たいていの男は「永き青春」を認めてくれないんだな。

Rommelさん、
梅が枝餅はもちろん、私の好物ですわよ。
あの香ばしい香りがたまらんのです!
もなママさん、
Posted by まつむらゆりこ at 2009年04月10日 22:33
こんばんは。俳句紹介もなさるんだ、長明寺と呼ぶんでは女の子らしくないけど、松村さんの文で俄然見えてきました、永遠少女が!こういう男は妻の成長を妨げるもんです。幻想を愛したいんかな。(真綿ならぬ)「塩漬けの葉でくるまれて妻少女」一句できました(汗)
Posted by 赤目 at 2009年04月10日 23:07
確か交流電気の周波数の50Hzと60Hzの境界線は、一般に静岡県の富士川と新潟県の糸魚川を結ぶ線が境界とされ、東側が50Hz、西側が60Hzです。ところで皆様。糸魚川ー静岡構造線はフォッサマグナの西の境界線です。時々ごっちゃになっている人がいますので。
Posted by morijiri at 2009年04月10日 23:54
赤目さん、
俳句は大好きです!(句集の紹介もしますよ)ただ、今回は桜餅の歌が見つからなかったんです。
お作は、結句が決まってますねぇ。

morijiriさん、
的確なご指摘ありがとうございます。
そうそう、フォッサマグナは地帯ですから、一本の線であるはずがないんですよね。たぶん桜餅の境界もあいまいであろうかと。
Posted by まつむらゆりこ at 2009年04月11日 09:51
関東者なので、桜餅といえばクレープタイプでした、今は、個人的には、つぶつぶと粒あんの道明寺タイプのほうが好きですが。

でも、長命寺のほうが相聞に似合いそうです。
向島の長命寺餅の老舗には、一時ここに子規が間借りしてて、そこの看板娘と淡い恋におちたという伝説が残ってます。
子規の作品には、「芋坂団子」や「ふぢむら」など和菓子の老舗が実名で登場します。

葉隠れに小さし夏の桜餅  子規

餅菓子は常温でもひんやりしてて、これからの季節はおいしく感じますね。
Posted by SEMIMARU at 2009年04月11日 20:27
桜餅にも東西の違いがあるのですねぇ。
勉強になりました。
ところで、餅と言えば柏餅というのもありますよね。今回ご案内の東京の方の桜餅に形が似ているような・・・。
私は子供の頃、この両者の違いがわからなかったのです。
で、morijiriさんのコメントにあるように、桜餅は葉っぱごと食べるので、そのつもりで柏餅も葉っぱごと食べてしまったことがあります^^;
どうでも良いことで恐縮ですが、餅について私のとても苦い思い出です<m(__)m>

それから今回のお話の中で、一番興味をもったことですが、
「少女らしさを失わない夢見がちな女性」
う〜ん
そういう方が奥様だったらいいな^^
Posted by KobaChan at 2009年04月12日 11:11
SEMIMARUさん、
まあ、すてきな子規の句をありがとうございます。
「餅菓子は常温でもひんやりしてて」なんて、すぐにお菓子屋さんへ何か買いに走りたくなりました! 

KobaChanさん、
柏餅も好きです(って、そういう話じゃ…)。
何かの小説で、主人公が皮ごと(葉っぱごと)柏餅を食べている友人に「おい、皮を剥いて食えよ」と言うと、彼はくるりと川の方を向いて食べ続けた、という話がありました。
何でしたっけ。庄野潤三っぽいような気がしますが……。
Posted by まつむらゆりこ at 2009年04月12日 20:58
三日見ぬ間の桜かなではありませんが、週明けパソコンを立ち上げるとすごい量の書き込み。恋の歌より食べものの句、でしょうか、食い物の項目というのは、モーレツな反応がありますね。そうそう、昨日の日経読書欄に「与謝野晶子」が取り上げられていました。作者は元新聞記者の歌人。「平明な文章」とありました。これたいへんな誉め言葉だよね。
Posted by 冷奴 at 2009年04月13日 10:44
冷奴さん、
恋も食べものも楽しまなくては。
ご指摘の通り、「平明な文章」は私にとって最高級の褒め言葉です。
でも、先日、ある人に「いやー、あなたの文章は読みやすい。いい文章、書こうと思ってないでしょ」と言われ、「むむ…」と思ってしまいました。
Posted by まつむらゆりこ at 2009年04月13日 11:51
ある人に「いやー、あなたの文章は読みやすい。いい文章、書こうと思ってないでしょ」と言われ、・・・

そのある人の「いい文章」の定義は違いますね。カッコつけて「いい文章」のつもりなんだろうけれど、中身が何にも伝わらない(or中身がない)文章が氾濫しているのは嘆かわしい限りです。
読み手(相手)に想いが届いてこそ表現。これは散文も韻文も同じでは? 40年ほど前に文筆業の手ほどきを受けた人間の、古い思想なのかな?
Posted by 濱徹 at 2009年04月13日 20:30
濱徹さん、
「散文も韻文も同じ」というご意見に、とても賛成です!
人に伝わる詩歌と文章を目指したいです。
Posted by まつむらゆりこ at 2009年04月14日 19:05
鶴屋八幡の桜餅(もちろん道明寺系)は葉っぱが2枚。これがトラディショナルなんだそうですが、これを2枚ともいただくのはなかなか難しい…
東京に出てきて(同じころかも…笑)長明寺系桜餅を見てニセモノやん、と思ったのですが、どうやら起源は長明寺のようで…

今日もいただきましたが、雨でも春を感じます。
Posted by Chibinemu at 2009年04月26日 00:53
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