2009年08月07日

ちはやふる

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  ちはやぶる神代もきかず龍田川からくれなゐに水くくるとは
                      在原業平朝臣


 見事にハマってしまった。マンガ「ちはやふる」である。
 タイトルは、主人公である千早の名、そして彼女が最初に覚えた一首にちなんでいる。物語は、小学六年生の千早が競技かるたに出会ったところから始まる。かるたを通して仲良しになった男の子たちとの別れを経て、高校生になった千早は競技かるた部を作ろうと画策、そして……。
 7月10日のブログで「手の不思議」について書いた際、「こんぎつね」さんがコメントに、競技かるたをテーマにした、この作品について教えてくださった。わくわくして読み始めたところ、もうなつかしさ全開で感激しっ放しだ。

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 公式試合のとき最初に読み上げられる空札「難波津に咲くやこの花冬ごもり今を春べと咲くやこの花」がなつかしい。足の甲が畳で擦れてタコになってしまうことがなつかしい。試合では「札の配置を覚えるよりも、前の試合の配置を忘れるほうが難しい」ということもなつかしい。
 忘れていたさまざまなことを思い出す。例えば、取り札の裏に書かれた文字のこと。練習するときは同じ部屋で何組もの試合をするので、取り札がごちゃごちゃにならないように、かるた一箱ごとに札の裏には「風」「花」「月」などと筆書きされていた。自分が勢いよくはねた札がどこかへ飛んでいってしまい、「どこかに『花』の『乙女の姿しばしとどめむ』はありませんか〜〜」なんて訊ねるのは、なかなか風情のあることだった。
 「ちはやふる」第5巻では高校生クイーン(女流選手の最高位)が登場して、千早はその強さに圧倒されるのだが、実は私が高校生のとき、当時かるた王国と呼ばれた山口県に、17歳という史上最年少の高校生クイーンが本当にいた。九州大会に彼女が出場した際、会場で仲間と「あっ、あの人がクイーンだよ!」とささやき合ったときの興奮をまざまざと思い出した。
 というように思い出は尽きないのだが、競技かるたを全く知らない人にも、このマンガは絶対にお薦めである。スポーツとしてのかるたの面白さ、そして和歌の美しさが楽しめる。

☆末次由紀『ちはやふる』(2008年5月〜、講談社・現在第5巻まで刊行)


posted by まつむらゆりこ at 00:05| Comment(19) | TrackBack(1) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
では早速読んでみることにいたします。
先日は、たろちゃんおすすめの「とめはね!」にハマりました。これは高校生の書道クラブのマンガです。こうした学園マンガを通して日本文化が見直されるのっていいですね!
Posted by もなママ at 2009年08月07日 08:31
もなママさん、
そうそう! 「とめはね!」も気になっていました。
競技かるたについては、マンガならではの表現が素晴らしくて。書の世界もそうかもしれませんね。
Posted by まつむらゆりこ at 2009年08月07日 08:50
私もマンガ大好きです。思えば「ベルサイユのばら」でフランス革命史に詳しくなり、「エースをねらえ!」で一時テニス部に在籍し、「アラベスク」で子どもにバレエを習わせ、「あさきゆめみし」で源氏物語を読んだ気になり、「日出処の天子」で日本史にハマり、「王家の紋章」で古代エジプトにあこがれ、「ガラスの仮面」で女優をめざし(?)、「ポーの一族」でドラキュラの肩をもつようになった私。

そのマンガを読んだらかるたに目覚めるかもしれません。なにはともあれ、総理大臣がおっしゃる前からマンガは日本の文化です。
Posted by Lucy at 2009年08月07日 09:07
Lucyさん、
なるほどぉ。私はちばあきおの「キャプテン」で高校野球が好きになり、萩尾望都を読んでブラッドベリなどSFが好きになり……という人生です。
Posted by まつむらゆりこ at 2009年08月07日 17:24
ちはやぶる・・・この歌を見るとどうしても落語を思い出してしまいます。
百人一首なんですよね。
競技かるたを作品にするとしたら、実写はむずかしいです。
マンガというのはいい表現方法です。
それにしても、昨夜NHKでやってましたが、マンガの主人公は年をとらないです。
「ゴルゴ13」が登場したもっとも古い時代は
1967年の第三次中東戦争でした。
いったい何歳になるんだろ?
Posted by SEMIMARU at 2009年08月07日 19:19
SEMIMARUさん、
ゴルゴ13は何もかも謎です。
実写「ちはやふる」が撮られるとしたら、隅っこでかるたをしているエキストラで出たいです!
Posted by まつむらゆりこ at 2009年08月07日 20:21
ご案内の歌は、落語で有名ですね。
落語の方では龍田川はお相撲さんの名前だそうで^^
Posted by KobaChan at 2009年08月07日 20:29
KobaChanさん、
そうなんです!
落語は落語で愉快なお話ですよねえ。「ちはやふる」を巡る、いろいろな名作を楽しめるってしあわせです!
Posted by まつむらゆりこ at 2009年08月07日 21:25
こんばんは。
「ちはやふる」こんなに楽しんでいただいて、感激です。映画の中で、パシッと札を飛ばしている松村さんが見えるようですね。
私は、第1巻の「自分のことでないと夢にしたらあかん」という新くんの言葉にきゅっと胸をつかまれ、全巻購入してしまいました。
あの、それから私はKonぎつねでして、点々はありませんので、どうぞよろしく、コン。
Posted by こんぎつね at 2009年08月07日 22:14
こんぎつねさん、
まあ、お名前のこと、たいへん失礼しました!
うっかり者でごめんなさい。
「ちはやふる」を教えていただいて本当によかったです。友人たちにも薦めたいと思っています。
Posted by まつむらゆりこ at 2009年08月08日 07:49
まつむらさん、こんにちは。

「ちはやふる」、おもしろそうですね。さっそく、読んでみようと思います。

百人一首といえば、高校1年の夏休みに100首全部覚えるよう宿題が出て、結局半分の50首しか覚えられなかったことが思い出されます。

その後、今から十数年前、自分が子どもの親になり、子どもたちがポケモン数え歌に夢中になっているので、将来、何の役にも立たないポケモンの名前を覚えるのに、子どもの柔軟な記憶力を使うのはもったいないと、家族ぐるみで、百人一首を覚えさせました。

3人の子どもたちからは、百人一首を覚えてもちっとも役に立たないと恨まれています。親としては、覚えた百首を活用していない方が悪いと言いたいところですが…。

このマンガは、子どもたちも、おもしろがって読んでくれるかもしれません。
Posted by 拓庵 at 2009年08月08日 14:59
拓庵さん、
私も高1の冬休みに百人一首、覚えました!
きっと3人のお子さんたちは将来、感謝するはずですよ。ぜひぜひ「ちはやふる」を読んでみてください。
Posted by まつむらゆりこ at 2009年08月08日 22:18
いやあ、久し振りに懐かしい話題でボクは懐かしくセイシュン時代を思い出しました。
受験対策として古典部門は「伊勢物語」と「百人一首」だけで済ませたボクにとって「ちはやふる」は一番懐かしい歌です。ついでに「一枚札」なども思い出してしまいました。
古典落語としても小さい頃から親しんできた演目ですが、最近聞いたものでは(ネタバレでまずいかもしれませんが)おちが「千早の戒名」となっていて、記憶にあった「千早の本名」と違っていました。こちらが主流なのでしょうか。
Posted by マコトニイチャン at 2009年08月09日 00:55
マコトニイチャンさん、
私の記憶でも「千早の本名」でしたけれど??
「むすめふさほせ」という「一枚札」は、子どものころ最初に教わりましたねえ。弟は「ほととぎす」「かささぎ」などを「動物」シリーズとして覚えていましたっけ。
Posted by まつむらゆりこ at 2009年08月09日 09:26
「ちはやふる」読みました。読み出したら、引き込まれ、一気に5冊読み終えました。

この「ちはやふる」という作品自体、大変ドラマチックな作品ですが、その背景に作家と編集者のドラマがあることもわかり、いっそう関心が高まりました。
これからどのような展開になるか楽しみです。

読み応えのある作品を紹介していただきありがとうございました。
読み終わった後の感想と調べたことをブログにまとめたのでトラックバックさせていただきます。
Posted by 拓庵 at 2009年08月09日 22:42
拓庵さん、
コメントとトラックバック、どうもありがとうございます。
「ちはやふる」という作品だけでなく、それを生み出したドラマには、私もいたく感じ入りました。6巻以降が楽しみですし、作者を応援したいと思います。
Posted by まつむらゆりこ at 2009年08月10日 08:46
思い出は、宝物ですね。

これからも、いい思い出ができるといいね。

みんな、みんな思い出になるね。
Posted by junji at 2009年08月10日 09:42
ここに書くのがふさわしいかどうか不明なのですが、松村さんの古巣の新聞社の書評欄に「31文字のなかの科学」の大きな書評が9日付けでのっていました。評者は中村佳子さん。まことにひとを得た内容と思いました。古巣の新聞社はなぜか松村さんの著作の紹介が冷たかったのですが、これで追いついた感じです。
Posted by 冷奴 at 2009年08月10日 11:55
junjiさん、
思い出というのは、単なる記憶というのとは違う感じがしますね。

冷奴さん、
誠にありがたい書評でした!
科学者である中村桂子さんというのがまた嬉しくて。
Posted by まつむらゆりこ at 2009年08月10日 12:23
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