あなたがわたしを必ず好きでゐてくれた昨日へ書きたい今日の
てがみを 辰巳 泰子
ああ、もう読んだ途端にせつなくなってしまった。
私は割に手紙を書くほうなのだが、さすがに毎日会う人へは書かない。一番近くにいる人の傍らで、お礼状だ何だとせっせとペンを走らせている自分に、ふと違和感を抱くことがある。もっと大事なことを、もっと大事な人に伝えなくてはいけないのではないか?
付き合いが長くなると、お互い欠点やおばかなところが見えてしまう。焦げ焦げの餃子を作って叱られたときや、つんけんした言葉を投げつけ合ったときなど、無性にかなしくなる。「わたしのこと、もうあんまり好きじゃないんだろうなぁ……」
この歌は、「必ず」という言葉が、ちょっと幼いような素朴なニュアンスを出していていい。いつ、いかなるときの私であっても「好きでゐてくれた」あなたへの信頼と愛があふれている。そして、あなたを責めているわけではないところに、じんとする。「昨日のあなた」へ手紙を書くのではないのだ。「昨日」という、二度と帰らぬ時点に向けて、手紙をしたためたいのである。二人とももっと互いに見つめ合い、やさしい言葉で話していた昨日へ。
今ごろ「好きです」なんて言ったらおかしいだろうか。でも、時にはそう伝えてみてもいいんじゃないかと思う。
この歌の作者は、第一歌集から完成された世界をもっていて、文語表現に長けた人だ。凝縮された芯の太い抒情が魅力であるが、最近の作品にはやわらかな口語表現の何ともいえないゆったりとした感じが加わり、深みが増したように感じる。
作者もきっと、彼に改めて「好きです」と伝えたいのだ。それが「今日のてがみ」を書きたいということではないかな、と思う。素直な気持ちで「てがみ」のようなひとことを言ってみたくなった。
☆「月鞠」2009年9月 第7号
はじめまして! いつも読んでくださっているとのこと、とても嬉しいです。「動揺」という言葉に笑ってしまいましたが、心が揺さぶられる歌がよい歌だと思います。これからもどうぞよろしくお願いします。
これから先、もし、絵葉書を出すような出会いあれば、「好きです」と書きこめる自分になっていたい・・・
そんな、気持ちになりました。
何とせつない「元気です」でしょう!
「(あなたのことが好きだから)元気です(って書きたくなりました)」という絵葉書の思い、伝わっていたらいいですね。
すべてを言い得てあまりある一文です。
歌に「どきん」としてくださって嬉しいです。やさしい気持ちになれる歌っていいものです。
が、拡大解釈すれば、別れてしまった後悔の念にも取れる。
昨今の精神科医は患者さんに「あなたの夫婦関係はセックスレスですか?それはいつ頃からですか?」という、言い方が患者さんを素直にさせる、質問だそうである。
ドクターも、最近の患者さんの心理を読みとるのに苦労し、見た目に健常人であってもやんでいる人も、セルフコントロールに悩む、この世相では、やはりSelf-Helpの考え方が必要なのではないかと、大層なことを思ってしまった…。感謝!
「別れてしまった後悔の念」という解釈も、とっても切なくてよいと思います。私は一緒にいる相手(あなた)と読みましたが、自分に引きつけた解釈であることは重々承知しております。
このタイトルの言葉を手紙に書いて、
由利子さんに送ったら・・・・
ハハハハハ・・・由利子さんに嫌われそうww
いやぁ…(照)…どんなときでも、このタイトルの言葉は嬉しいものですよ。幼稚園児に言われても、おばあさまに言われても!