2009年10月23日

新聞

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  報道がテレビに移る過渡期なる四半世紀を新聞にあり
                      島田 修二

 なるほど…と深々とうなずいてしまう。作者は新聞記者だった人である。1953年に読売新聞社に入り、浦和支局、東京本社の整理部、文化部などを経験した。26年間務めた後、50歳で退社した。
 私が新聞記者になったのは1984年だから、ほんの少し島田修二の記者時代と重なっていたのだなあと感慨深く思う。そのときは内勤の校閲専門記者だったが、86年から取材記者になった。合わせて22年間の記者生活なので「四半世紀」には少し足りないのだが、気持ちとしては「報道がネットに移る過渡期なる四半世紀を新聞にあり」という感じである。
 島田が現役の記者だった頃、新聞記者は花形の職業だった。私も大先輩たちから、いろいろな武勇伝や、予算が多かったころの贅沢な取材について聞かされたものだ。この歌は、そういう黄金時代を知る作者が、速報性を誇るテレビに対して、新聞が懸命にメディアとしての優位を保とうとする状況で詠んだものであろう。自分の活躍した時期は、思い返せば「過渡期」だったのだ、とやがて訪れる新聞の凋落を見据えている。
 私が新聞社に入ったころ、すでに新聞はテレビに圧倒されていた。しかし、記録性、信頼性の高さはそれほど揺らいでおらず、新聞がなくなるなんていうことは考えもしなかった。ところが、コンピュータ編集が導入され、記者がワープロ、そしてパソコンで原稿を書くようになり、あれよあれよという間にインターネットが新聞社のみならず人々の暮らしに入り込んだ。
 それは本当に恐ろしいほどの速さであり、考えられない事態がいろいろ起きた。若い記者に無邪気な顔で「検索エンジンがなかったころは、一体どうやって取材してたんですかぁ?」と訊ねられたり、初めて会った取材相手から「松村さんはこんな記事を書いてますよね。ネットで読みました」なんて言われたり、といったことは、今は珍しくないのだろうが、5、6年前には仰天したものだ。
 遠からず紙の新聞はなくなるのではないかと思う。しかし、ニュース価値を判断して編集された紙面や一覧性は、ネットの記事には今のところない。「報道がテレビに移る過渡期」から四半世紀。これから「報道」がどうなってゆくのか、新聞社を離れた今も気になって仕方がない。

☆島田修二歌集『渚の日日』(1983年、花神社)
posted by まつむらゆりこ at 00:00| Comment(10) | TrackBack(0) | 働く女たちへ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
「マスゴミの崩壊〜さらばレガシーメディア」という、化石業界で四半世紀以上暮らした人間にはつらい本を読みました。一時情報を取る難しさとそのコストをネットのひとは分かっているのでしょうか。しかし業としての新聞、テレビはもう終わりかけていると思わざるをえない状況です。日本では情報が載っている紙代、映像を流すテレビというハコにお金は出しても情報そのものにはお金を出す習慣がないから、レガシーメディアの経営は成り立たなくなります。この先ジャーナリズムを取り巻く世界はどんなことになるのでしょうか。暗澹たる思いでいっぱいです。
Posted by 冷奴 at 2009年10月23日 12:29
冷奴さん、
うーむ、同感です。一次情報をきちんと取ってまとめるジャーナリストがいないとダメなのに、ネットには危なっかしい情報も多いのに……と、詮無いこととは思いつつ憂慮するばかりです。
Posted by まつむらゆりこ at 2009年10月23日 17:54
正岡子規の随筆で読んだ記憶があるのですが、ビスマルクは「新聞とは紙の上に刷りつけられたインキなり」と言っていたそうです。
また、佐藤栄作元首相は、退陣表明のとき「新聞は言ったことがそのまま伝わらない、テレビはそのまま伝わる」と言って新聞記者が退席したあと、テレビカメラにだけ話しかけたといいます。
ビスマルクも(エムス電報事件がよい例)佐藤栄作も新聞の力を知ってたので、そんなことを言ったのでしょう。
 テレビやネットは、録画、保存などしないかぎり情報にふれるのはそのときだけです。
紙の新聞は、後で何度も見ることができるので、すたれることはないと思いますが。
Posted by SEMIMARU at 2009年10月23日 19:33
私は由利子さんが新聞記者になる2年前からテレビ局で働いていた。
彼らは、どぎつい「豊田商事会長殺害事件」のカメラをまわしながら、視聴率とスクープ映像であった事による、収益に踊り狂っていた。→その道義的感覚についていけなくなり、辞めたのであるが…。
今も私は、ある意味Intelligence Bizに携わっている。
インターネットの草創期より、Macで始めて開設メール通信に喚起したものだが、アル・ゴアによる「情報ハイウェイ構想」を基にした軍事→民生のインターネットが流行るに連れ、ネット上の情報の重みも感じるようになった。
私にとっては、インターネットによる調べものは有料を除き、10%以下の信用しかもてない。今の若者が無感覚に、そのネット情報に信頼感を持った行動をとっていることに、憂慮し、私自身は日経夕刊とFinancial Timesだけを愛読している。(毎日新聞は私的トラウマで嫌いですけどね(笑)
Posted by ErwinRommel at 2009年10月24日 09:06
SEMIMARUさん、
そうですね、「後で何度も見ることができる」のも紙のよさですよねえ。すたれてほしくないです。

Rommelさん、
メディアの使い分けというのも、メディア・リテラシーの大事な一面ですね。ネット時代に育った若者のナイーヴさを私も憂慮します。君たち! ネットを信じすぎちゃだめだよ。
Posted by まつむらゆりこ at 2009年10月24日 11:03
こんばんは。
スケガワです!

86年から取材記者として現場で活躍なさったのですね。わたし、86年生まれです!ビビット♪

新聞を読むと、心が潤います。
やはり、自分の関心以外の出来事・ニュースに触れることのできる出逢い・偶発性が魅力的です。

新聞の役割は過剰な情報を選択し、判断し、意味づけをして読者に提示すること・・・

なくなったら困りますよー><。

なるほどり♪は不死鳥であることを祈ります。

Posted by すけみほ at 2009年10月24日 23:09
すけみほさん、
お〜お、86年生まれですって?!
いやいや、ここで驚いていてはいけない。
そうです、ネットのニュースはランダムに並べられた見出しの中から、自分が読みたいものをクリックして初めて内容を知るわけですが、新聞はぱっと広げて「ん? これ何?」と拾い読みする「偶発性」があります。脳科学的にいっても、潜在的にある関心が刺激される、たいへんに面白いメディアなんです。
「なるほどり」を応援してくださって、ありがとう!!
Posted by まつむらゆりこ at 2009年10月25日 08:45
ううむ。

業界の一人として沁みるテーマです。

一次情報産業としての基本は、直に人に会って話を聞くことかなと思います。知識見識はその次。しかし、新聞社はどこも人が足りず、一次情報の総量が不足気味です。

それと、速報性やある種の「分かりやすさ」に偏ってきました。本当に信用すべき情報が薄くなるのを日々、実感しています。
Posted by 堂郎 at 2009年10月26日 11:36
堂郎さん、
一次情報の大事さは、新しい世代の若者には伝わりにくいかもしれません。「人に会って話を聞くこと」、やっぱりそれが基本ですよね。本を読む喜びは、著者から直接メッセージを手渡される確実な感じにもあるのかなあ、なんて思います。
Posted by まつむらゆりこ at 2009年10月30日 09:08
始めまして、福岡の泉潤太と申します。

突然失礼します。

地元の西日本新聞とデーリーヨミウリを取っていましたが、マスコミが信じられなくて二誌を解約しました。

NHKも解約しょうとしましたが、パソコンを使用しているからだめだということです。テレビを点け音声を消して、地震情報を時々見ています。

解約の理由:第二次大戦の時も、福島の震災の時もマスコミが本当のことを伝えないからです。
肝心な時に、新聞、テレビ、が沈黙してしまいます。

日本の事を知りたければ、外国のメディア。
外国(アメリカ)のことを知りたければ日本のメディアを知ればよくわかると、自分では思っています。どこの国でも自分のことを隠すのが普通なような気がします。

テレビや新聞の役割は、今のふがいない状況では、私は終わったと思っています。
新聞、NHKの復活を願っていますが、、、。

私は福島の震災のことは、ネット(木下黄太、小出さんその他)の記事を読んでいます。

外交のことは、孫崎享さんのツイッターを読んでいます。そして書籍を買ってなるべく本当の事を知ろうと努めています。

ネットで自由に意見が言えることを望んでいます。



Posted by 泉 潤太 at 2013年02月14日 22:29
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