2010年01月29日

アメリカ

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  こんがりとパンが飛び出すトースターあの日アメリカは輝いてゐた
                   山田 公子


 仕事で1週間ばかりアメリカへ行ってきた。テキサスとニューメキシコ、2つの州だけの旅である。「ここはどこ?」と思うほど、スペイン語のアナウンスとメキシコ料理店があふれていた。
 アメリカというのは、近くて遠い国だ。子どものころは身近に感じていたが、おとなになるにつれて分からない部分が増え、とてつもなく遠く感じることもある。国際社会が複雑になり、日米関係も変化し続けているから、当然といえば当然なのだが、一抹のさみしさがある。
 1月21日付のUSA TODAYには、大学1年生を対象にしたアンケート調査で、「経済的に裕福になること」が大事だと考える人が78・1%に上ったという結果が掲載されていた。1969年の時点では、同じ質問に対してそう回答したのは42・2%だったという。逆に「人生で大切な意義を得ること」が大事だと答えたのは、1969年では84・9%、2009年では48・0%という結果だった。回答者の学生のうち、4・5%の父親は雇用されておらず、このアンケート結果には厳しい経済状況が反映していると見られる。
 帰国して買った『ルポ 貧困大国アメリカU』(堤未果著、岩波新書)の第1章には、学費の上昇や大学間格差、拡大する一方の学資ローンに苦しむ学生たちの実態が描かれている。学資ローンには消費者保護法は適応されず、不良債権化するローンも少なくないという。読んでいるだけで、息苦しくなってしまう内容だ。
 この歌の「トースター」は、オーブントースターでなく、「パンが飛び出す」タイプである。きつね色に焼けたトーストが飛び出す勢いが、1960年代あたりのアメリカの元気のよさと重なる。小学生だった私はベトナム戦争のことも知らず、「トムとジェリー」や『ゆかいなホーマー君』『クローディアの秘密』のアメリカこそがアメリカであると信じていた。
 この歌の作者も、当時の明るく豊かなアメリカのイメージを、自分の幼年時代や青春と重ねてなつかしんでいるのだろう。歌が作られたのは、まだ9・11が起こる前だ。「あの日」は二度と戻らない。

☆山田公子歌集『日曜日のフライパン』(本阿弥書店、1996年11月)
posted by まつむらゆりこ at 00:00| Comment(15) | TrackBack(0) | エッセイ集 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
 焼けたパンが飛び出すトースター。焼けたころあいが分かるトースターなんてすごいと思っていました。あれはタイマーが入っているんですよね。シンプルシングルライフって、トースターはないものなんです。一人住まいの娘たちも持っていないみたいで、フランスパンをいじってガーリックトーストをつくると、えらく好評だったりします。
Posted by 冷奴 at 2010年01月29日 12:52
学生時代にアメリカへの憧れはありましたね。ジャーニー、スティクス、ボストン、イーグル・・・
曲もホテルカルフォルニアなんか一生懸命
ギターコピーした記憶があります。
でも、今は自分の中のアメリカは黄昏ています。
Posted by リュウチャンパパ at 2010年01月29日 14:32
アメリカに行ってらしたのですね?
僕はもう久しく行っておりませんが、
生まれて初めて行った外国が学生時代のアメリカでした。
アメリカといえども、北部の大都会と中西部や南部では
まるで違う国のようですよね。
たぶん松村さんとほぼ同年代だろう、この僕にとって、
かつてのアメリカは眩しいほどに憧れの国でありました。
Posted by tokoro-11 at 2010年01月29日 19:32
こんばんは、そしてお帰りなさい。
冒頭の一首は、ドラマ「パパは何でも知っている」あたりのアメリカ中流家庭をイメージして詠まれたものでしょう。
私などは、世代の違いもありますが、ベトナム戦争後の荒廃したアメリカ社会、都市は犯罪の巣窟となり、家庭は離婚で崩壊、ジェットセットとホームレスが同居する格差大国、という負の面を意識してしまいます。

戦後日本は、アメリカ(のような暮らし)を目指してきました。その一部はかなえられましたが、その付けを今払いはじめているような気がします。
Posted by SEMIMARU at 2010年01月29日 21:10
1969年、学生の私はEUにいました。多くの学生との熱い会話から飛び出すものは「金」でもなく「パン」でもなく、国を超えた「志」「夢」だったような記憶があります。
時は過ぎ、ようやくそれらがこんがりと焼けて飛び出します。
Posted by ひろし at 2010年01月29日 21:30
無事お帰りなさい。テキサス、ニューメキシコって、西部劇でカウボーイがサボテンの荒野を馬の鞍にダッチオーブンをつけて行き交う姿が想像されます。(笑)
飛び出すトースター置き場所があれば買いたいです。(懐かしい)
Posted by コビアン at 2010年01月30日 12:57
冷奴さん、
えー、オーブントースターは独り者に重宝するものですよ! お餅も焼けるし、ピザも温められるし…。

リュウチャンパパさん、
うーん、私の中のアメリカは、ひと言では表せない複雑なものです。なつかしく、温かく、でも怖い面もあって。

tokoro-11さん、
そうですよね、眩しかったです。かっこよくて。今もそういう面があるにはあるのですけれど。

SEMIMARUさん、
本当に世代によってもイメージは随分と異なるでしょうね。今の10代、20代に訊ねてみたい気がします。

ひろしさん、
国を超えた「志」「夢」こそが、これからの世界を救うのでしょうね! 「世界」2月号に載っていた、「国家関係というよりは各国の市民のあいだの国境を越えたつながりが重要性を増している」という入江昭さんの文章に感じ入ったところです。

コビアンさん、
ただいま! カウボーイのイメージは色濃くありますね。カウボーイもののお土産品も健在でしたよ! 飛び出すトースターも捨てがたい良さがありますね。
Posted by まつむらゆりこ at 2010年01月30日 20:58
おかえりなさいませ・・・
風邪とかひいていないですか?

オーブントースター、なつかしいですね〜
もう十年以上、朝食は健康の為、納豆&味噌汁が欠かせない為、パン食べていないな〜
久しぶりに食べてみますね〜
Posted by 中村ケンジ at 2010年01月30日 21:31
仕事を変えテキサスも遠くなりました。テキサスはまだまだ都会でもいなかっぽくて、比較的元気、という印象でしたが・・・いかがでしたでしょうか?
夢のある国って感じはたしかにしなくなりましたね。夢が無いのは想像力の限界でしょうかね・・・
Posted by chibinemu at 2010年01月31日 00:34
中村ケンジさん、
心配してくださって、ありがとうございます! 元気ですよ!! 納豆&味噌汁の朝ごはん、いいですねえ。力が出る気がします。

chibinemuさん、
オースティンの町並みは落ち着いていて好きでしたが、どんどん新しいビルが建つので閉口してる、って私の友人は話してました。大統領選のときは、久々に「夢」を感じましたが。
Posted by まつむらゆりこ at 2010年01月31日 11:50
「世界」2月号読みました。同感、共鳴です。
この記事でポップアップトースター、憧れの伊社製へと代替しました。
オペラ風に飛び出してくるのが憎いところです。
さてさて わたくしの 飛び出しは 何風となるでしょうか
Posted by ひろし at 2010年01月31日 18:04
「キャピタリズム」を見てきました♪
友人が「かつての憧れのアメリカ、今いずこ」と言っていましたが…

うちの娘たちに至っては、かつてアメリカが輝いていたことすら知らないのかもしれません。

あまりにアメリカナイズされた娘たちは、今さらアメリカのなかに珍しいものも素晴らしいものも発見できないかのようです。
先日娘とフロリダを旅行しましたが、感激したのはアメリカ人のノリのよさだけだったみたい。

「次はどこに行ってみたい?」と聞いたら「温泉」と言われました。
Posted by もなママ at 2010年02月01日 15:26
ひろしさん、
おお! 普天間移設問題の特集号をさっそく読まれましたか。同感、共鳴してくださった由、とても嬉しいです。伊社製のトースターとはかっこいいですね。きっとひろしさんも、心憎い登場の仕方をなさるのでしょう!

もなママさん、
フロリダからお帰りなさい! うーむ、「かつてアメリカが輝いていたことすら知らない」世代…なんか、いつも戦争してるし、医療費は高騰する一方だし、囚人数は恐ろしく多いし…? そう言われれば、そうですね(泣)。
Posted by まつむらゆりこ at 2010年02月01日 18:08
採り上げて下さってありがとうございます。憬れていたアメリカも歳月を重ねるごとに見えてくる現実に色褪せて…松村さんのおかげで、まだ頑張れる気がしてきました。
Posted by 山田公子 at 2010年02月27日 16:32
山田公子さん、
この歌、本当に大好きなんです。トーストが飛び出す勢いのよさが、いったんは明るい気持ちにさせるところがいいんですよねえ。
Posted by まつむらゆりこ at 2010年02月28日 09:49
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