女子フィギュアの丸きおしりをみてありてしばしほのぼのと
灯れり夫は 馬場あき子
最近、歌人の集まり以外のところで短歌の話をする機会が少し増えた。先日は、子どもの本の専門店で開かれている小さな定例会に呼ばれ、親しみやすい現代短歌をいろいろと紹介した。少人数だとだんだんうちとけ、一人ひとりと話しながら進められるのが、とても楽しい。
フィギュアスケートのこの歌を読み上げたとき、参加者の一人が、ぱっと「これって、最近のフィギュアじゃないと思う。『丸きおしり』っていうのは、ひと昔前の選手よね」と言った。他の人も口々に「そうそう」「伊藤みどり選手とか」と相槌を打ち、大笑いになった。
歌われているのは恐らく、夫婦でテレビを観ながらくつろいでいる場面だろう。作者がふと気づくと、夫が目を輝かせ、頬を紅潮させている。どうしたのだろうと思えば、画面にはフィギュアスケートの選手が優美に氷上を舞う姿がある。彼女の若々しい身体に、夫の胸は久々にときめいているのだろうなあ……。長く連れ添った夫婦の機微がなんともいえず可笑しい。
「丸きおしり」で私がまず思い出すのは、1972年の札幌オリンピックに出場し、銅メダルを獲得した米国のジャネット・リン選手である。尻もちをついた後の、あのさわやかな笑顔は実に印象的だった。しかし、それにも増して、小学生だった私がいまだに忘れられないのは、このとき銀メダルを取ったカレン・マグヌッセンというカナダの選手である。
金メダルを取った選手の名はとうに忘れたのに、一体どうしてだろうと不思議になって調べてみると、なんと彼女とジャネット・リンのおかげで、今日のフィギュアスケートがあることが分かった。つまり、札幌オリンピックまでのフィギュアは、コンパルソリーという、氷上に規定通り線を描く種目とフリーしかなく、オーストリアのベアトリクス・シューバ選手(ああ、そうだった!)は、コンパルソリーが1位、フリーが7位という成績を総合した結果、金メダルを獲得したというのだ。リン、マグヌッセンはフリーで1、2位だった。このときの結果を巡って「フィギュアはスポーツか、芸術か」という論争が起こり、翌年の世界選手権からショートプログラムが導入されたのである。
何の知識もない日本の小学生が感動して数十年も名前を忘れないほど、あのときのカレン・マグヌッセンのフリー演技は素晴らしかったのだと思う。そして、彼女もまた「丸きおしり」の人だった。
☆馬場あき子歌集『青い夜のことば』(雁書館、1999年11月)
そろそろ日本人も金メダルとってくれないかなあ。(ちょとしたクイズに応募してあるので)笑
今、何やっているんでしょうね〜
本当に愛らしい選手でしたね!
髪型もかわいかった!!
中村ケンジさん、
たぶん札幌オリンピックは、あなたが生まれる前の話なのでしょう〜〜。伊藤みどりさんは、解説などで活躍していらっしゃるのでは??
ところで、全然話は変わりますが、『だいたいいくつ?』の出版おめでとうございます!「数え切れないような数」を数えるのが楽しくなるような絵本ですね!
これからは自分の年齢も体重も概算でいこうと思っている私です♪
私にとっても伊藤みどりさんは「最近の人」です。ああ、トシを感じますね。
絵本のこと、喜んでくださってありがとうございます!
冷奴さん、
いやぁ、今回の男子フィギュアは、結構意見の分かれるところでしょうねえ。ライサチェク君、それでいいのか!という思いは私にもあります。
それにしても、今日の男子フィギュアはいくつもドラマがありました。
札幌のリン、マグヌッセンは覚えてます。
なぜか金のシューバは印象が薄いです。
マグヌッセンは、リンより実年齢で1歳しか違わないのに、ずっと大人の女性に見えました。小さな子供心にもリンは「かわいいお姉さん」マグヌッセンは「きれいなお姉さん」
と感じました。
カレン・マグヌッセンを覚えていてくださったことがすごく嬉しいです!!
そうですよね、「きれいなお姉さん」と「かわいいお姉さん」。本当にその通りでした、感激です。
本日フリーが終わり、冷奴さんの予想通りになりましたね。ああ、しかし、金メダルが1個しかないのが本当に残念……。