マリヤの胸にくれなゐの乳頭を點じたるかなしみふかき繪を
去りかねつ 葛原 妙子
マリヤ牧場!
牧場にこれほどふさわしい名があるだろうか。何というか、無一文になった旅人が雨の夜に戸を叩くと、笑顔で迎え入れられ、温かい食事と気持ちのよいベッドのしつらえられた部屋が与えられるような。そして、翌朝の食卓には、コップ一杯のミルクが置かれているような……。
なんていう妄想を抱くのは私だけだろうが、石垣島を何度か訪れるうちに、「マリヤ牧場」の存在が気になるようになった。離島ターミナルに行くたびに、幟を見ては「あっ、マリヤ牧場のソフトクリーム!」と心が躍るのだが、いかんせん、このターミナルの中には八重山そばやマグロ丼のおいしい店があるため、連れと二人、そちらへ流れてしまうのであった。
そういうわけで、引っ越してきて嬉しかったのは、マリヤ牧場の牛乳が買えることだった。ともかくおいしい。冷蔵庫から出してしばらくすると甘みが増すのも、経験したことのないおいしさだ。
どんなネーミングも、創業者の思いを反映したものだろう。島には「ガリラヤ湖」というカレー屋さんもあるのだが、この取り合わせの妙にはやや戸惑う。うーむ、敬虔なクリスチャンが経営なさっているのではないか、誠実に作られたカレーは絶品なのではないか、と思うものの、まだ食べたことはない。
島にある飲食店の名は、「ゆうな」「でいご」「あだん」といった植物名、「ぱいかじ(南風のこと)」「ピパーツ(島胡椒)」など、八重山の言葉を使ったものが多い。私はまだまだ島の初心者なので「ゆうくぬみ」「ふぅがぁーや」あたりになると、意味が分からない。一度、設計士さんと待ち合わせするとき、電話で何度聞いても、先方が指定する居酒屋の名「にぃーけーや(二階家の意)」が分からなくて困ったことがあった。
そんな中、電話帳で「オルテガ」という店の名を見つけた。オルテガ! 途中で挫折した『大衆の反逆』が気になるが、何か全く別の八重山の言葉である可能性も捨てきれない(そうかな?)。一度、行ってみなければ……。
葛原妙子のこの歌を読むと、どきどきする。画家の感じたであろう眩暈のような罪悪感と、その作品を見る作者の揺れる心が、読む者にも迫ってくる。「マリヤ牧場」の素朴な明るさとは対極にある世界といってよいかもしれない。
☆葛原妙子歌集『飛行』(白玉書房・1954年7月刊)
いやぁ、褒めすぎですって……。
「連れ」のことですね!(照)
海岸は遠いので、まだこちらに来てからは行っていません。今度の日曜日、地域の刺し網体験漁に参加してきます。楽しみです。
…って思ったらうちの叔母さんだった(笑)。
このところ名前シリーズなのですね。前回の「エミリ」の時、私が思い浮かべた名前は「ナンシィ」でした。ナンシィ・ブラケットです。でも本名は確かルース。ナンシィは海賊稼業の「アマゾン号」船長の時の名前です。「このトンマめ」と妹の航海士ペギィを叱り飛ばす姉御です。確かな船乗りで、頭がべらぼうに良い女の子です。「アマゾン号とツバメ号」以来余り登場しないのですが、彼女の10年後が気になっています。ちょうど第二次欧州大戦が始まる頃になるはずです。
今回の「マリア」では、やはり「マリア」でした。つい先日BSで「ウェストサイド物語」(やはり大傑作ですね)を観たばかりだからでしょうか。
The most beautiful sound I ever heard,
Maria…のフレーズを思い出しました。マリアとは確かに良い響きです。ちなみに我が娘はマリです。
タイトルと写真を見たとき思わずほほえんでしまいました。
私も、「おっ、『エミリ』のつぎ『マリヤ』!?」って思いました。
次は何でしょう。プリンスエドワード島ならぬ『石垣島のアン』の自由帳に期待です♪
そうなんですよぉ……。
冷奴さん、
恐れ入ります。歌は変わってゆくと思いますが、どんなものになりますか。
マコトニイチャンさん、
ああ! ナンシーは好きな名前です。本名はルースだけど、自分で自分につけちゃったというところがまたいいんですよね。
もなママさん、
「マリヤ牧場」の牛乳、本当においしいんですよ。スーパーには沖縄県産のいろいろな牛乳が並んでいますが、やっぱり地元のものが一番です!
本島には流通しているのかな?
那覇は宮平牛乳が有名だけど飲んだことありますか?
宮平牛乳、スーパーに並んでいますが、まだ買ったことないんです。今度、試してみます!
たとえば新潟県柏崎には「良寛牛乳」があります。
「マリヤ」といえば、私の家の近くに「マリヤクリニック」という診療所があります(もちろん女医さんです)。
一度診察を受けてみたいけど、病気らしい病気もないので・・・・
おお、「良寛牛乳」! それはそれは…(うーん、飲むと善い人になりそうです)。
「マリヤクリニック」もいいですねえ。私も受診してみたくなりました。
「マリア牧場」というネーミングは、信じる人によっては、しっくりするし、見えみえの客引きの名前とも写るし、ホンマにボケと突っ込みの文化で過ごした私には、ロマンティックでもあり、ローカルであるが故の「しっくり感」とも感じ取れる、コメントでありますわ。
先日、思春期のマドンナへ「お気に入りのCD」をお送りしますよ!と口を滑らしてしまった。
私にとっては、その後の女性との人生へ、少し影響を与えてくださったヒトであるが、この年になると、五感を使った「人間愛」というものを様々な歌の中から嗅ぎ取ることが出来るようになり、まだ歌は詠めないが、自分の中での緊張、自己防衛本能、云々についての想いが氷解していく瞬間を色々なところに求めている自分にハッとすることがある。
ストレス社会ゆえの、ロマンティシズムなのか、本来持ち合わせていた感性なのかは、神のみぞ知る境地なのかと、前向きに思えるようになった。
重い心を引きずる人々にも、対峙せねばならない「相談員」としては、自分の心の健康=気分発散も大切にしたいですね?由利子さん?
マリヤ牧場の牛乳、みなさんに味わってもらえたらいいなあと思います。よい食べものは、よい言葉と同じように、人の糧になるものですから。
↓こんなサイトを見つけました。参考まで。ご存知かもしれませんが。
大人になったナンシイ
http://homepage3.nifty.com/dhsanada/saga/person/nancy.html
教えてくださって、どうもありがとうございました!