ココ椰子とバナナが腕をふりまわすこのみどりいろをもつてゐる
緯度 井辻 朱美
「バナナ」と聞けば、たいていの人が黄色い房、あるいは1本のバナナを思うだろう。私もそうだった。しかし、このところ自分の中で「バナナ」の存在がぐんぐん大きくなり、多年草であるところの植物として居座るようになった。
それは、まあ早い話が、わが家にバナナが5本立っているからなのである。5本とも親切なお隣から分けてもらったもので、そのご夫妻はそのまたお隣の家から分けてもらったという。バナナは根元から子株が次々に出てくるので、どんどん増えるのだ。
バナナくんたちを養子にもらう件は誠にありがたい話だったが、問題は居場所であった。何しろこのあたりは、赤土を少し掘るとこぶし大の石がごろごろしており、バナナくんに満足してもらえるくらいの深さの穴を掘るのは結構な重労働なのである。
その重労働を全面的に相棒にまかせてしまった私だが、朝夕の水やりは欠かさない。仕事で家を離れている間は、「風で倒れていないか」「少しは雨が降っているといいけど……」と気をもむのであった。
この歌は、バナナの果実ではなく、風にそよぐ一本のバナナを詠っているところが、とても珍しい。実は、バナナの歌には名歌が多いのだが、どれも素材は果実である。
みどりのバナナぎつしりと詰め室をしめガスを放つはおそろしき
仕事 葛原妙子
アフリカのことわざひとつ呟きぬ「ゆっくりゆっくりバナナは熟れる」
中津昌子
チンパンジーがバナナをもらふうれしさよ戦闘開始をキャスターは
告ぐ 栗木京子
この歌では「緯度」という、やや思いがけない一語が効いている。バナナがよく育つのは、南北緯度約30°以内で、バナナベルトと呼ばれる地帯である。
そして、「腕をふりまわす」という表現は、実際にバナナが葉を風にそよがせている様子を見なければ出てこないものだと思う。風が強いと盛大にふりまわすことになり、やわらかな葉は無残に裂けてしまうのだが、「大丈夫、大丈夫」とでも言うように、バナナは立ち続けている。
☆「かばん」2000年6月号
それにしてもバナナの短歌があるなんて知らなかったです。
私も肉体労働をしないわけではないのですけれど(と、言いわけする)。いやぁ、亜熱帯です、ホント。
中村ケンジさん、
「栽培」というほどのものではないのですが、早く実らないかな、と楽しみです。
バナナの次はなんでしょう。たのしみです。
ちなみに、和歌ではありませんが、私にとってバナナの歌といえば「さっちゃん」です。
三番がいちばんせつないんですけど、「バナナ篇」の二番だけでもじゅうぶん泣かせる歌でした。
「さっちゃん」ですか!!
私は「バナナが一本ありました〜♪」で始まる「とんでったバナナ」を時々思い出します。あの頃のバナナって、存在感がありましたよね。
先日息子が沖縄のお土産に石垣産ロイズのパウンドケーキを買ってきました。黒糖とラム酒とパインが入って、とても美味しかったです。
そうそう! その歌です。
そのサビ(?)の部分が底抜けに明るくて好きでした。
コビアンさん、
石垣島から台湾って、すごく近いのです。無農薬バナナが自宅で出来るということも、考えてみるとすごいですねえ。
それにしても自家製バナナが食べられるとは
うらやましい。
重労働で植えてくれた「相棒」さんには、一番おいしいとこを食べさせてあげましょう。
「前衛舞踏」とは、愉快な比喩ですね!
そういえば、南の植物は横へ横へ広がるものが多いかもしれません。
「相棒」には、一番おいしいところを…とのアドバイス、ありがとうございます!