また生えて来いよと庭の雑草を抜く朝(あした)なり出国の日の
本多 稜
南の島の生活を、多くの人はバカンスのように思っているようだが、それは全く違う。毎日が闘いである。相手は日によって異なるが、昨日(22日)の相手は雑草だった。
私の主な収入源は原稿を書くことなのだが、こちらに来てから、書ける時間が本当に少なくて焦る。思いもかけないことがいろいろ起こり、それに対処していると、どんどん時間がたってしまうのだ。
庭の雑草については、見て見ぬふりをしていた。気にならないわけではないが、草取りなんてしている暇はない。原稿を書かねば……しかし、地面がほとんど見えなくなってきた時点で、はたと気づいた。これでは、大事に育てているバナナに水をやるのも困難になってきた。それに、こんな草むらをハブは好むという。バナナがやっと実ったとしても、その前にハブに噛まれて死んでしまったら、何にもならない――これは半分冗談だが、あとの半分が冗談でないところが、南の島なのである。
決心して向かったのは、島で最も頼りになるホームセンターだ。迷うことなく草刈り機のコーナーへ行き、一番安くて軽いタイプと専用のオイルを購入してきた。
かなり唐突な行動と思われるかもしれないが、私はこれまでちゃんと草取りもした経験があるのだ(実際は、大いなる助っ人であるお隣のご夫妻に手伝ってもらったのだが)。そして、島の雑草が、草というよりは灌木に近いことを痛感させられたのである。根っこの太いことといったら、ゴボウのようだ。それを根こそぎ抜き取るというのは、至難の技といってよい。
かくして、防護用のゴーグルを着け、農作業用の帽子をかぶり、長靴を履いた私は、日の傾き始めたころ、庭で草刈り機をぶんぶんと振り回すこととなった。「あ〜、原稿……」と思いながらも、まあまあ労働の喜びは味わえた、かもしれない。
「また生えて来いよ」と思いながら雑草を抜く、この歌の作者はとても優しい人だ。おそらくは、ほよほよとした頼りない雑草ではないかと思う。しばらく自宅を離れなければならない作者が、庭をきれいにしておこうと草を抜きつつ、その小さな生命をいとおしく思った朝なのだろう。
島の雑草は、早晩生えてくるに違いない。「また生えて来いよ」なんて言われなくても、夏の太陽をたっぷりと浴び、はつらつとして。
☆本多稜歌集『蒼の重力』(2003年12月、本阿弥書店)
何でも誰かにやってもらおうと画策しているうちは南国には住めないことがよくわかりました。
住めばとても健康によさそうだけど。
…バナナだけ食べに行っちゃだめかなあ。。。?
どうぞ、バナナだけと言わず、いろいろなものを食べに来てください! 今年はマンゴーもパイナップルも、もう盛りを過ぎてしまいました。お目当ての果物の旬を確かめていらしてくださいね。
我が家の庭もジャングル状態です。石垣島のゴボウのような雑草とはスケールが違いますが、蚊とスズメバチとシマヘビ対策に養蜂家のようないでたちで雑草と闘っています。掲載歌のように「また生えて来いよ」とは決して言いたくない!草刈り機、もう三台つぶしました。今、草刈隊として応援に行けば終生由利子さんに感謝されそうだけれど、私も今、へとへとで〜す!同病相哀れむではないけれど、お互い草には泣かされますね。頑張れ!
このところ、我が家も島唐辛子(コーレグース)や油みそに凝っていますが、マンゴーは高くて手が届きません。(笑)
南の島はホント伸びるのが早いですよ〜
おお、スズメバチとシマヘビも!(「養蜂家のようないでたち」に笑ってしまいました)
そして、3台の草刈り機がダメになったとは……まだまだ草刈り初心者であることを認識しました。
コビアンさん、
アドバイスありがとうございます!
コーレーグーズは野菜炒めなどを本当においしくしますよね。油みそもごはんに合うし、夏バテにはお勧めです。
morijiriさん、
日々バージョンアップしております。
中村ケンジさん、
目に見えるくらい伸びるのが早いですよね!!
雑草も、廃線跡などに生えているものなどには「兵どもが夢のあと」などと風情を感じたりしますが、「潅木のような」とは想像もできません。意外とアイランドライフも大変ですね。
ハブに関しては「沖縄」と括れないんです。
島によってハブのいる島、いない島とあって、石垣島はいるのですねえ。宮古、波照間、与那国などはいないので羨ましい!
そして、雑草の手入れといい、
新しい生活の場でのご苦労・・・
本当にお疲れ様です。
きっとそういう逞しい体験が、
由利子さんの新たな歌作りの素になるのでしょうね^^
うーむ、歌に結びつくかどうか……なよやかで繊細な歌もつくりたいと思うのですが(涙)。