鈴の音も子どもも子どもを産むことも透きとほりゆく三ヶ島葭子
のうた 米川千嘉子
三ヶ島葭子は、埼玉県入間郡三ヶ島村(現所沢市)に生まれた近代歌人である。同時代の原阿佐緒や原田琴子などと比べると、やや詠風が地味だが、しっかりと暮らしをとらえた視点に魅力がある。
この歌には、詞書として葭子の「鈴ふればその鈴の音を食はむとするにやあはれわが子口あく」が添えられている。離乳期の子どもだろうか、親に食べさせてもらっているくらいの幼い子の愛らしい姿が浮かぶ。
葭子は病弱だったため、一人娘を夫の両親に預けなければならなかった。「一日にて別るる吾子のほころびを着たるままにてつくろひやれり」など、淡々と詠まれている中に哀切な思いがあふれている。
意志の強い人で文学的な野心もあったから、最初この歌を読んだときは、「透きとほりゆく」がぴんと来なかった。しかし、葭子の歌を繰り返し読むうちに、心ならずも子どもを手放し、この世を去った薄幸の歌人が、少しずついろいろなものをあきらめた過程は「透きとほりゆく」という境地ではなかっただろうか、と思うようになった。
今月26日(日)午後1時半から、葭子の出身地、所沢市の三ヶ島公民館ホールで「晶子と葭子――その思想と暮らし」と題して講演する。与謝野晶子に憧れた葭子の歌歴や、実際の晶子との接点、二人の歌の共通点などについて紹介したいと思っている。
講演はいまだに苦手で、9月はこのほかにも人前で話す仕事がいくつかあるのが憂鬱だ。原稿の締め切りも山のようにあり、ヤモリやアリの動静を探る余裕もなくなってきた。さあ、仕事、仕事!
☆米川千嘉子歌集『衝立の絵の乙女』(2007年9月、角川書店)
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我が子を手元で育てられないとは、本当に切ないですね。きっと毎晩枕を濡らしたと思います。その娘さんも歌人になっているようですね。(全く無知で済みません)よかった。
…ところで、この歌人のお名前は何と読むのですか。(↑姪はもっと無知で、すみません)
あれっ、三ケ島公民館ですか?
市内だし、自宅からも近いので、
僕もたぶんお邪魔させてもらうと思います。
愉しみに待ってます!
本当に切ない歌です!
娘さんは倉片みなみさんです。私はまだお会いしたことがありません。
Lucyさん、
うっかりしていました。「みかじま・よしこ」です。
tokoro-11さん、
まあ、日曜日の大切なお時間を割いてくださること、恐縮です。皆さまを楽しませるお話をしなければ!!
オレも早く松村さんのようにバリバリ活躍したいです!
いえいえ…でも、住むところが変わっただけで、仕事自体は今まで通りなんですもの。
「透きとほりゆく」という心境に達するまでの苦悩はいかほどだったのだろう、引用歌を読んでると、そう思いました。
うーん、葭子の場合は病気療養のためでしたから、思うように歌や小説は書けなかったと思います。本当につらかったでしょう。