
歯を見せて笑ふ政治家のポスターを吾は好まずその政治家も
清水房雄
島は選挙の季節である。石垣市議選は今月5日告示され、12日に投開票が行われる。転居して4か月余り、私にとって初めての選挙なので、街に貼り出された候補者のポスターを眺め、わくわくしている。
ところで、今週、調べものをしていて、面白い発見があった。与謝野晶子の評論に出てくる「バンカアスト夫人」というのが、イギリスの婦人参政権運動家、エメリン・パンクハースト(Emmeline Pankhurst、1858〜1928年)らしいことが分かったのである。
彼女は少女時代にパリで学んだ急進的な人で、ハンガーストライキをするわ国会突入を試みるわ、何度も逮捕されている。婦人参政権のシンボルのような存在らしい。これだけなら、志のある偉い人だったんだなあ、ということで終わるのだが、私が英語版のウィキペディアを見ていて、目を丸くしてしまったのは、そこに「メアリー・ポピンズ」という文字があったからだ。
自分の好きな本が映画になるのは、大抵の場合、複雑な思いを味わうものだが、P.L.トラヴァースの『メアリー・ポピンズ』シリーズと、ディズニー映画の場合、なぜか全く別々の作品として自分の中にインプットされており、あまり痛みを感じず両方を楽しんできた。1つには、この映画がよく出来ていることが大きい。どの歌も完成度が高く、主演のジュリー・アンドリュースの歌声は実に素晴らしい。また、もう1つの理由は、映画を観たのが本を読むより先だったこともあると思う。
しかし、名曲揃いの映画の中で、唯一あまり好きでなくて、「は?」という感じが否めなかったのが、「Sister Suffragette(婦人参政権論者の同志よ)」という歌である。本の中のバンクス夫人(ジェインとマイケルのお母さんですね)は、こんな参政権運動には関わっていなかったし、イメージ全然違うよぉ、と内心憤慨していた。
ところが! この歌になんとパンクハースト夫人が登場しているのであった。
Political equality
And equal right with men
Take heart for Mrs.Pankhurst
Has been clapped on iron again
映画の中でバンクス夫人は、参政権運動に熱心になるあまり子どもたちをナニーにまかせっ放し、という設定だったから、この歌詞にも揶揄が含まれているのだろう。しかし、それにしても十代のころサントラ盤のレコードを繰り返し聴き、今はCDを持っているという私が、パンクハースト夫人についてなぁんにも知らず、与謝野晶子全集を読んだことがきっかけで、ここに至るとは……。他の歌は、だいたい歌詞を覚えているのだが、この歌だけは飛ばして聴いていたので、こんな固有名詞が挿入されていたとは知らなかった。人生、いくつになっても驚くことが多い。
日本の女性が参政権を得たのは、第二次世界大戦後のことだから、まだ百年とたっていない。今度の日曜日には、パンクハースト夫人のことを思いつつ投票所へ赴くことにしよう。
☆清水房雄歌集『老耄章句』(1999年9月、不識書院)
えっ、それ、覚えていません。人はそれぞれ印象に残るところが違うんですねー。そう言われれば、バンクス氏が何か結びつけていた記憶が……意味深ですよねえ(ディズニーの思想的傾向の表れ?)。
拙著を借りてくださって、ありがとうございます! お楽しみいただけますように。あっ、講演も頑張らないと(汗)。
もしかしたら松村さんも四年後、出馬の依頼があるかもしれないですね〜個人的な意見として政治家も向いていると思います。沖縄の為にぜひ!
石垣市議選は、定数22のところに34人が立候補してます。4年後も8年後も、何年後も出馬という可能性はないので!
そういう悪い冗談は、ホントやめてくださいってば! 取材して書くことが一番好きなんだと改めて思う今日このごろであります。
お久しぶりです。
今日の話は本当にすごい話ですね。
結構欧米の映画は、パロッているものが多いので、その背景がわからないと、みんなが笑ってても、「何で可笑しいの?」ことがよくありました。
今度の所沢での講演、楽しみにしてます。
面白がっていただけて嬉しいです。そうそう、何のパロディかわからないのってさみしいですよね。そういう「発見」は映画を観る楽しみの一つでもあるのですが。
僕は、4年ちょっと前にカンボジアに移住しようとした時に、日本の住民票を抜いたきりで、その後、大学の先生も飽きたのでフルタイムはやめ、東京とカンボジア・中国や(ベトナム・インド)などを(往復しながら)放浪する生活なので、世界中どこにも住民票はありません。選挙もできないし、特別給付金ももらえません。いいことは、税金が追いかけてこないことくらいです。
住民票上は、もう世界のどこにも、生きてはいない、という感じでもあります。まあ、世界のどこにいても、本が読めて短歌が作れれば、人生の100パーセントくらいは、それでいいのですが。
「住民票上は、もう世界のどこにも、生きていはいない」というのは、なかなかにカッコいいけれど、困ることもありそうですね。ゆるやかな住民票をつくり、戸籍をなくす、というのがよさそうに思うのです。
人の名前にも土地柄があらわれるんですね。
インパクトのあるお名前がたくさん。練馬に掲示してくれたら黙っていてもたくさん票が集まりそうなのに。
「トモヨセ」さんはどんな字を書くのでしょう。縁起のよさそうなお名前ですね。
全然「参政権」と関係ないコメントでごめんなさい。でも、思わず写真を拡大して、しばし見入ってしまいました。
ポスター見ているだけで、わくわくするでしょう? 「トモヨセ」さんは「友寄」です。他にも「我喜屋」「通事」「伊良皆」「小底」「知念」……ああ、石垣島に住んでるんだなぁ、って感じです。
私のもってた子供向けの百科事典に各国の婦人参政権について書かれた項目で、各国の女性が獲得年順に並んで投票しているイラストが描かれてました。
トップはニュージーランド(1893年)で「牧場の乙女」姿、つづいてアメリカ・イギリス・フランスでスーツ姿ですが、アメリカはパーマヘア、イギリスはセミロングヘア、フランスはベレー帽をかぶり、つづいて日本(和服姿)、インド(サリー姿)というのが、妙に可笑しかったです。
子供向けの百科事典に「婦人参政権」の項目があったということに感激です。わが家には玉川の児童百科事典がありましたが、そんな楽しいイラストはなかったなあ(と思う)。
お互い節目の年ですね。
ご活躍を陰ながら応援しています。
メッセージ、とても嬉しかったです。
本当にありがとう!
本日は市川房枝さんの選挙運動で触発されて、政界に入った政治家・菅直人氏の実質的な真価が問われる(?)組閣が終わったようですね。
憂国ではなく、面白くない位の政治の方が、私にとっては国民が一所懸命頑張れ、力がつくのではないか?と最近思えます。
自分が与えられた職(あるいは、生かされている)も同様と思えるのですが、参政権<権利を得るために、義務(生きること、職を全うすること)にもいそしむことが必要なのかと、つれずれに思ってしまいました。
触発感謝
市川房枝さんたちの活動も私たちは忘れてはいけませんね! それにしても、今のメディアは政局のことばかりで政策論が少ないなぁ……。