2010年12月31日

今年を振り返る

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  し残せる事の幾つか思ひつつ湯舟にて聞く除夜の鐘の音
                        神作 光一


 激動の2010年が終わる。万感こもごもの歳晩である。
 今年の私のトピックスは、
@沖縄・石垣島に引っ越した
A9月からツイッターを始めた
B第三歌集『大女伝説』を上梓した
――の3つだろうか。
 「し残せる事」は本当にたくさんあって、自分が怠け者であることを反省するばかりなのだが、それは来年の目標ができたということでもある。今年の自分よりも、少しでも進歩できるように努力を重ねようと思う。
 番外編のトピックスとしては、西日本新聞の書評委員になったことだろうか。これは本当に楽しい仕事で、それを理由にいつも以上に新刊をたくさん買ってしまった。

 私のお薦めは……
・科学       近藤宣昭『冬眠の謎を解く』(岩波新書)
           柘植あづみ『妊娠を考える』(NTT出版)
・メディア論    佐々木俊尚『電子書籍の衝撃』(ディスカバー携書)
・小説       池上永一『テンペスト』(角川文庫・全4巻)
・哲学・思想    高橋哲哉『殉教と殉国と信仰と』(白澤社)
・ノンフィクション 関千枝子『広島第二県女二年西組』(ちくま文庫)
           斎藤友佳理『ユカリューシャ』(文春文庫)

 新刊をわさわさ読んだ割には文庫が多いが、人にも本にも出会うタイミングというものがある。
 今年は親しい人やかつての同僚が若くして亡くなり、死というものを改めて考えた年でもあった。「いつか〜〜しよう」と先延ばしにするのはやめようと思う。会いたい人には会いに行き、やりたいことには挑戦したい。人生において「し残せる事」は少ない方がいい。

 ☆神作光一歌集『冴え返る日』(2001年、短歌新聞社)
posted by まつむらゆりこ at 09:15| Comment(14) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
「人にも本にも出会うタイミング」があるというのはいいですねえ。
 松村さんの石垣島への移住という話を初めて聞いた時は、すごい衝撃を受けました。
 来年も益々のご活躍を期待してます。
Posted by けんじくん at 2010年12月31日 11:07
けんじくんさん、
再会するタイミングというのもあるでしょうね。
今年もお世話になりました。どうぞご家族で遊びにいらしてください!
Posted by まつむらゆりこ at 2010年12月31日 12:32
 幸せ、充実した一年のようでしたね。
 何よりも「し残せる」ことを新しい年の目標にするなんてやはりこの一年が確かなものだったことでしょうね。

お正月、思いっきり楽しんでください。
新年が佳き年になりますように。
Posted by あい としえ at 2010年12月31日 12:41
書評委員が楽しいって、やっぱり本が好きなんですねえ。
1冊の本の書評を書くためには、10冊くらいは読むわけですよね。
私だったら読書感想文を書くために本を読む、ってことになりそうです。
読むこと、書くことが仕事になっても楽しいって、やっぱり由利子さんはすごい!!
Posted by みのだりつこ at 2010年12月31日 12:44
あい としえさん、
ありがとうございます!もうすぐ原稿を書き終えて、お正月の準備をしたいと思います(って、午後4時現在……)。

みのだりつこさん、
いやー、今年のエンゲル係数ならぬホンゲル係数(なんじゃそりゃ)は、すごいことに。単なる浪費家じゃないか、という気もします…。こんな私ですが、来年もよろしくお願いしますね♪
Posted by まつむらゆりこ at 2010年12月31日 16:02
向井敏の書評集『背たけにあわせて本を読む』(文藝晴秋)は、孔子からカフカ、向田邦子、司馬遼太郎など古今東西ありとあらゆる本の書評がおさめられています。まさに「書評千篇」の趣のある極上の書物です。その中の章「歌人の誕生」で紹介されたのが松村由利子さんの歌集『薄荷色の朝に』でした。

 万智の流儀に与(くみ)することで独自の才能を研ぎだすことに成功した歌集に出会った。松村由利子の第一歌集『薄荷色の朝に』である。まず、すらりと丈の高い歌いぶりの恋歌二つばかり。

 ・涼やかな君の裸身よ水渡る先頭の鹿のような首筋
 ・一杯の水を飲み干す真直さで抱きしめられて光放てり

 と何首か紹介が続きますが、上記の二首を読んだとき、私は強烈に印象に残りメモしたのを覚えています。この章の最後に次の歌がかかげられています。

 ・ 悲しみの深ければ人は森へ行き誰かを呼ばわん鳥となるまで

 なんと深い悲しみだろうと心がえぐられる思いでした。「この歌人は人知れぬ悲しみを声限りに、しかしじつに清げに詠じて」という向井敏の評に深くうなずきました。
 カフカや孔子など古今東西の名著に混じってまだ無名だった松村由利子さんの歌集をとりあげた向井敏の、「良いものは良い」とする公平無私で高い見識は見事なまでです。
 向井敏の見事な評価はそれから数年たって遅まきながら正しく世間の評となってブレークしました。私は、この書評集を読んで以来ずっと松村由利子さんの歌を愛読してきました。
 松村さんが書評を執筆なさるというビッグニュースを天国の向井敏さんが聞いたら、きっとお喜びになるでしょうね。本がお好きな松村さんの書評を私も楽しみにしております。
 どうぞ良いお年をお迎えください。



Posted by ろこ at 2010年12月31日 20:21
明けましておめでとうございます!
今年も松村さんの活躍を祈っています。
さっき京都の平安神宮に行って帰ってきたところです。絵馬に「もっと短歌が上手になるように」と書いて来ました。松村さんのように上手になるといいな〜
Posted by 中村ケンジ            at 2011年01月01日 16:54
ろこさん、
向井敏さんの著書で拙著が紹介されたことを思い出してくださって、とても嬉しいです。書評委員の任期は4月から1年間なので、2011年3月で一応終わりですが、機会があれば書かせてもらえるとのこと。向井さんの素晴らしい文章を思いつつ、これからも書いていきたいと願っています。

中村ケンジさん、
こちらこそ、今年もよろしくお願い申し上げます。絵馬にも歌のことを書かれた由、熱心な中村さんの思いはきっと天に届くでしょう!
Posted by まつむらゆりこ at 2011年01月02日 11:59
『大女伝説』からまだ一年ですか!?

2010年はとても長く感じられる年でした。
お互い11月は辛かったですね。でも悪いことばかりではなかった年でしたね。
今年はもっと喜びの多い年になりますように。

Posted by もなママ at 2011年01月02日 21:54
もなママさん、
2010年はいろいろなことがありましたね。新しい年もよろしくお願いします。よいことがたくさんありますように♪
Posted by まつむらゆりこ at 2011年01月03日 09:35
今年も宜しくお願いいたします。充実の年でありますように。さて2010年新刊マイベスト3は……

@F・ライバー「跳躍者の時空」(河出書房新社)A柳瀬尚紀「日本語ほど面白いものはない 邑智小学校六年一組特別授業」(新潮社)BM・マーサー「ジョニ・ミッチェルという生き方」(ブルース・インターアクションズ)
Posted by おやくすみん at 2011年01月04日 07:34
おやくすみんさん、
昨年のベスト3を教えてくださって、ありがとうございます。柳瀬さんの本は、amazonで届いたばかり。これから読むのを楽しみにしています。
お互い実り多き1年となりますように。
Posted by まつむらゆりこ at 2011年01月04日 12:12
 ひゃー、「日本語ほど面白いものはない」は1月号の「毎日フォーラム」のブックレビューに取りあげられます。まつむらさんが西日本の書評で取りあげられた本のリストも拝見しましたが、下世話な小生とはねらい球が、ちと違う感じでした。本年の1冊目は後藤正治著「清冽 詩人茨木のり子の肖像」。なにやら茨木のり子づいています。石垣でもアマゾンとはこれいかに、と思いました。もうそういう時代なんですね。
Posted by 冷奴 at 2011年01月04日 17:42
冷奴さん、
お薦めとして挙げたリストの中で、書評を書いたのは柘植あづみ、高橋哲哉の2冊のみ。あとは私の推薦であります。
『清冽 詩人茨木のり子の肖像』は書評の候補に取り寄せたばかりです。気が合いますね!
Posted by まつむらゆりこ at 2011年01月05日 12:17
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