あはれあはれ寒けき世かな寒き世になど生みけむと吾子見つつおもふ
岡本かの子
さまざまな事件や事故が起こる。新聞やテレビは早く結論を出さなければならないので、したり顔のコメントや分析であふれている。電車に乗れば、興味本位の見出しが雑誌広告に躍る。本当に気が滅入る。
あの岡本太郎の母であり、作家、歌人として活躍したかの子も、「ああ、寒々しい世の中よねえ。どうしてまたこんな寒々しい世に子どもを生んでしまったのかしら」と嘆いている。かの子はリフレインの使い方のうまい人で、この歌も、ほとんど一つのことしか言っていないのだが、それが哀切な感じを強めている。
いつの世も、親の思いは変わらない。地球環境はどんどん悪化するし、国際紛争はなくならない。年金制度は危ういし、この国の未来はどうなるのだろう。考えれば考えるほど憂鬱になってしまうが、だからと言って子どもを産むことがむなしいとは思えない。自分の子どもでなくても、汗びっしょりになって駆け回る姿や、楽しそうに数人でおしゃべりしている姿を見ると、何だか嬉しくなる。友達の子どもたちが、ちょっと会わないうちにどんどん成長するのも頼もしくって愉快である。自分たちの代で世界が終わるなら別だけれど、もう少しましな世の中にしなくっちゃ、という気にさせられる。子どもの存在そのものが喜びなのだ。