ジプシーの心にこごれる思いならんフラメンコの舞い激しき地団駄
伊良部 喜代子
「ああ、フラメンコをよく知らない人には、こんなふうに見えるんだ」。そう面白く思った。「地団駄」という表現である。
フラメンコの「サパテアード」(靴底でリズムを打ち出す技巧)には、いろいろなものがあって、足の裏全体で打つ「ゴルペ」、かかとで打つ「タコン」、足裏の前半分で打つ「プランタ」などを組み合わせて多様なリズムを表現する。「地団駄」のような激しいものもあれば素早く軽やかなものもあり、自分の足が楽器になったような面白さを味わえる。複雑なサパテアードを覚えるにはコツがある。先生が踊るのを見て覚えようとするよりも、音に集中して耳で覚える方が早くて正確なのだ。初めはそれが分からなくて苦労した。
そう言えば、フラメンコを習い始めて最初に戸惑ったのは、サパテアードで大きな音を出すことだった。それまでの人生では何となく「お行儀が悪い」とされていたことだから、「いいのかしら」とおずおずと床を踏んだ覚えがある。
靴音が出ないのはきちんと体重を乗せていないからだと、最近ようやく分かってきた。振りに自信がなくて手足の動きだけを何となく真似ているときは、体重移動ができていない。「全然踏めてないよ!」と先生から叱声が飛ぶ。私はふだんの生活で、自信のない時や疲れている時は知らず知らずのうちに声が小さくなる。フラメンコでも同じだな、と思う。自分を肯定し、人生を肯定して踊るとき、靴は明るく大きな音で響く。
☆伊良部喜代子歌集『海神祭』(ながらみ書房、2004年11月出版)
時々覗きに来ます。
更新、大変ですが、頑張ってください。
私のホームページでも、ご紹介させていただきます。
ありがたいお言葉!
よろしくお願い申し上げます♪