
あはれ詩は志ならずまいて死でもなくたださつくりと真昼の柘榴
紀野 恵
「現代詩手帖」5月号の特集は、「東日本大震災と向き合うために」。圧巻は、福島市出身の和合亮一さんの長篇詩「詩の礫 2011.3.16−4.9」である。44ページに上る長さは、何か長歌を思わせる。この作品は、和合さんが故郷の自然や人々を思いつつ、ツイッター上で140文字ずつ書き連ねたものだ。リアルタイムで日々「詩の礫」を読んだ私は、深い悲しみや憤りに満ちた言葉に胸をかきむしられるようだった。
島の書店に「現代詩手帖」がなかったので、思潮社のサイトから申し込もうとしたところ、「2冊以上注文すると送料無料」とある。貧乏性なので「そうだ!あと1冊、現代詩文庫の何かを買おう」と思いつき、わが家の本棚を点検することにした。ところが、思いのほか揃っているではないか。
自分はこんなに詩が好きだったんだな、と改めて思った。そして、ふと手に取った「辻征夫詩集」に何か挟まっているのを見つけた。何やら人が寝ころんでいるイラストがたくさん付いた印刷物だ。はぁ?「産褥体操とスケジュール」?「産後第一目」「腹式呼吸」「足の運動」……。
たぶん活字中毒の私のことだから、息子を出産するときに何か読むものが欲しいと考え、病院へ持っていったのだろう。「産褥体操とスケジュール」は出産した当日にもらったはずだ。私と詩はいつも一緒だったのだ、と感慨深く思った。
詩は、空腹を和らげない。体を温めてくれない。役に立たない。でも、人は詩を必要とする。和合さんの「詩の礫」が、3・11以降の重苦しい日々、どれほど多くの人の心を慰めたことかと思う。時に涙を誘われ、胸が苦しくなっても、詩は私たちを豊かにしてくれる。
紀野恵の歌は、鮮やかな柘榴の美しさが印象的だ。言葉遊びのように見えるけれど、「詩は詩であり、実用的なものでもなければ、必然性のあるものでもない。でも、何て美しいものなんでしょう」という詩歌への讃美のように、私は解釈している。
☆紀野 恵歌集『フムフムランドの四季』(砂子屋書房、1987年)
私の頭の中で、「種蒔き」と「死」と「石榴の実」がぐるぐる回って、「志ならずまいて」を「志も持たず作っては、まき散らして」と思ってしまって・・、「でも死なないで実をつける」みたいな??
古語はつくづく難しいと思います。
でも、それが分かったら、この歌の美しさが感じられました。
「まいて」は「まして」よりやわらかいので、古雅な響きを好むこの作者は選んだのだと思います。「ぐるぐる回って」こそ、作者の意図したところではないでしょうか。「美しさ」を味わっていただけて嬉しいです。
この震災で最も有名になった詩は、なんといっても「こだまでせうか」でしょうか。
少々くどいとも思いましたが、なんとなく自分や人との関係をじっくり考える機会にはなりました。
引用歌もきっと詩歌のもつそういった面をうたっているのでしょう。
ホントに努力家だと思います。
紀野恵さんの短歌作品も独創的ですよね〜
心を満たすものとして詩歌はやっぱり力をもつと思います。金子みすゞは好きな詩人ですが、あの広告がひっきりなしに流れるのには少々閉口しました…。
中村ケンジさん、
いえいえ、勉強じゃなくて好きで読んできただけです。むしろ短歌の方が勉強として読んでいるかもしれません。詩は何と言うか、自分の最も深い部分に届いてくる気がします。
breeding Lilacs out of the dead land. も思い起こします。
素敵なコメントをありがとうございます。
エリオット、なつかしい! 美しい一節を引用してくださり、うっとりさせられました。
さくらさくらさくらさくら死人の山(正確ではないかもしれません)
こんな強烈なことばにどきりとしました。
本当にそうですね。物資の支援も大事だけれど、息長く言葉で表現し続けることも大切にしたいと思っています。言葉の力を信じて。
毎日新聞に、アウンサンスーチーさんが、月に一度、「ビルマからの手紙」を寄せてくださいます。震災後の手紙の内容は、次のようなものでした。
「悲しいことに、ビルマには他国に救援物資を送る余裕はない。だから、物資の代わりに、詩を寄せあうことにした。日本が立ち上がる時、私たちの詩が支えになればと願う。」
涙がでました。
松村さんの言葉も、私の大事な宝物です。
はじめまして!コメント、とても嬉しく拝見しました。
私の住んでいる地域は全国紙を配達してもらえないので、毎日新聞も読めず、スーチーさんの「ビルマからの手紙」のことを知りませんでした。何という深い言葉なのでしょう。
今度、図書館で探してみますね。教えてくださったこと、心から感謝しています。そして、私の拙い言葉を大事に思ってくださることも。
いやー、そうなんです。私も6月のライヴをとても楽しみにしています。由紀さんの歌う日本語は、素晴らしく美しいですから!
あの曲は、お茶目な内容なのに曲想がやや暗く、とても苦労しました!
とても素敵な詩でした。
ぜひもう一度お聴きしたいです。
うわぁ、それって、和合亮一さんの詩の朗読でなく、由紀さおりライブのことですか!! 「うわぁ」を連発するしかありません! My Funny Valentine、お気に召しましたか(汗)?
訳:松村由利子
歌:由紀さおり
Bass:弓で弾いてた
BS3 2012/1/21(土)武田鉄矢のショータイムのラストで歌ってました。テロップに松村由利子のクレジット出てましたよ
どうもありがとうございます!
どなたにもお知らせしていなかったのに気づいてくださって感激です。
(私自身も感激しました♪)
もうそろそろ、ブログ再開しなければ、と思っています。これからもどうぞよろしくお願いします。
ブログ再開楽しみに待ってます。