2011年05月20日

カボチャに思う

0520pumpkin.jpg

  トレーラーに千個の南瓜と妻を積み霧に濡れつつ野をもどりきぬ
                            時田 則雄


 石垣島では、春先からカボチャが出回っている。本土では6月から9月にかけて多く出荷されるので、だいぶ早い。
 会社勤めのころは、「カボチャなんてどうやって使うの!」「1個買ったら、永遠に(!)食べきれないよ」などと、カボチャに対して誠に失礼なことを思っていた。しかし、これほど使いみちの多い野菜もなく、今は近所の方にいただくとホクホク顔になってしまう。
 甘辛くやわらかく煮るだけではない。ポテトサラダのジャガイモをカボチャに代え、キュウリや玉ネギのスライス、さいの目に切ったハムなどを混ぜてもおいしい。薄くスライスして小麦粉をはたき、フライパンでかりっと焼いて塩を多めにかけると、つまみにも最適だ。先日は、パンプキンケーキ、パンプキンプディングにも挑戦してしまった。
 いま、原稿の締め切りを恨めしく思いながら、「これが終わったら、カボチャのあんパンを焼こう!」と企んでいるところだ。鮮やかな黄色いあんの入った、あんパンを想像すると楽しくて仕方ない。
 この歌は、「千個の南瓜」と「妻」が並列されているのが、実に大らかで愉快だ。上の句はユーモラスだが、「霧に濡れつつ」でしっとりとした抒情があふれる。一首全体からは、農業に携わる人の誇り高さがしみじみと伝わってくる。
 大震災とそれに伴う原発事故による影響で、多くの農家が仕事を失ったり、収穫物が売れなかったりという事態に直面している。誰もがこの歌の作者のように、農作物や仕事自体に誇りを抱いてきたに違いないのに、と思うといたたまれない。カボチャ1個、キュウリ1本、お米1粒にも、それを作った人たちの苦労と愛情が込められているのだと改めて思う。

 ☆時田則雄歌集『北方論』(雁書館、1982年)
posted by まつむらゆりこ at 11:51| Comment(7) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
こんばんは…
中村ケンジです。今回からkenkenと名乗りますのでよろしくお願いいたします。この名前の方が縁起が良いので改名します。

…かぼちゃ、おいしいですよね〜
かぼちゃ入りのサーターアンダギーもおいしいので、ぜひ挑戦してみて下さい。
では…
Posted by kenken at 2011年05月20日 22:44
千個のかぼちゃって、途方もなく大量で重くて重労働ですね。畑を借りて作ったのですが大量に出来すぎて、近所や友人に配っても食べ切れず、冬至のころまでありました(笑)包丁で切るのが大変、電子レンジにも大きすぎて入らず苦労した覚えがあります。めんこさんレシピが増えてお料理の腕も上がったことでしょうね。
Posted by コビアン at 2011年05月21日 07:16
kenkenさん、
改めてよろしくお願いします。かぼちゃ入りのサーターアンダギー! それは思いつきませんでしたが、むずかしそうだなあ。

コビアンさん、
「千個の南瓜」は誇張でしょうが、とても魅力的な表現ですよね。カボチャをお作りになったことがあるとは! 料理の腕はまだまだです(汗)。
Posted by まつむらゆりこ at 2011年05月21日 07:26
カボチャをジャガイモのように一口大に切ってカレーに入れるのもいいです。煮えすぎないうちにカレールーを入れて味付けするのがコツです。あまり甘くないカボチャならかえってカレーに合いますよ。
Posted by みのだりつこ at 2011年05月23日 09:26
みのだりつこさん、
おー、カレーにカボチャ!すごくおいしそうです。ぜひ今度、試してみます。わくわく……。
Posted by まつむらゆりこ at 2011年05月23日 13:29
まことに、おおらかで素朴でその上まだ枯れてはいない二人の間柄が、一枚の絵を観るように伝わってきます。
声高に夫婦の絆を求めなくとも、なにげない日常のなかにそれは存在するのですネ♪
Posted by スマイル ママ at 2011年05月25日 09:56
スマイル ママさん、
本当にそうですね! 「妻を積み」という表現はぶっきらぼうのようで愛情がこもっていて、すごくいいなあと思います。たぶん若い作者の照れもあるのでしょう。
Posted by まつむらゆりこ at 2011年05月26日 05:52
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