地球はもうダメだと子ども言い放ち公文の算数解きにかかりぬ
息子が小学2年か3年だった頃の歌である。そんな小さな子がため息まじりに「地球はもうダメだ」なんて言うこと自体にびっくりしたのだが、ほどなくけろっとした顔で算数の問題を解きにかかった彼の姿を見て、また驚いた。
「明日の地球よりも、今日すべきこと」みたいな大人びた割り切り方が可笑しくもあった。けれども、このひと言は長く私の中に残っている。
自分と子どもでは、随分と世界観が違うのだろうな、と思う。例えば戦争について考えてみると、小学生の私にとって「せんそう」は両親の経験した第二次世界大戦であり、「二度と起こしてはならない過去のもの」だった。ベトナム戦争についてはおぼろげにしか分かっておらず、「あれは別」と世界が平和であることを信じていた。ところが、1990年生まれの子どもは、小学生の時からいろいろな情報を持っていて、日本が戦争と関わっていることも知っている。
環境問題への意識や自然観も、今の子どもたちは大人よりもシビアではないかと思う。けろっとした顔で遊んだり勉強したりしていても、深いところで危機感や絶望感を抱いて生活しているのだろう。
親が子どもにしてやれることなんて、本当に小さな事柄ばかりだ。
☆松村由利子歌集『鳥女』