2006年07月07日

大きく見せる

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 敵に挑む小動物も踊り手も自分の姿を大きく見せる 

日本では概して小さなものが好まれる。ひな祭りの道具類のような愛らしい細工物がめでられ、小柄で華奢な女性が魅力的とされてきた。
 私は子どものころからなりが大きく、思春期にさしかかると男の子よりも身長が高いのが嫌で背を丸めて歩いていた。自分よりも背の低い男の子から好きだと告白されても、「私をからかっているんじゃ……」と素直に受けとめられなかった。靴を買いに行くと大きなサイズなのが恥ずかしくて、少しでも小さな靴に足を押し込もうとした。大女の悲哀である。
 だから、フラメンコを習い始めて、先生から「それじゃ体が小さく見えちゃうよ。もっと胸を張って大きく見せて」と指導されたときは驚いた。私の先生は、たいへんにスレンダーな美しい女性だが、生徒たちが「先生、ほっそーい!」と羨ましがると「なに言ってるの。あたし、もっと丸くなりたいのよ」と言う。
 フラメンコは挑発の踊りである。上体をひねり、両手を腰に当てた格好で前進するとき、前の方のひじは常に体の先端になければならない。スカートを左右に広げたり、腕を高く上げたりする動作は、自分を大きく見せるためのパフォーマンスだ。スペイン女性のどっしりした胴回りは、誠にフラメンコを踊るにふさわしい。
 あるとき、苛酷な自然を生き抜く動物の生態を紹介するテレビ番組を見ていて、ふと思った。「そうか、動物もフラメンコの踊り手も同じだな」
 もともとフラメンコには、異性の気を惹くためのコケティッシュな挑発が大きな要素として含まれているだろう。しかし私には、好きな男というよりは、厳しい現実社会に立ち向かっていくための踊りのような感じがするのだ。

☆松村由利子歌集『鳥女』
posted by まつむらゆりこ at 10:07| Comment(4) | TrackBack(0) | 情熱のフラメンコ短歌 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
あたし170の大女 センセの趣味に合わないと秘書の言いけり は立花隆の秘書だった佐々木さんの話 佳人、まつむらに背中を丸めて歩いた過去があったとはなぁ…逢坂剛のスペインものにある深夜のタブラオの妖艶なフラメンコの踊りを思い出しました。とはいえ標題のおうた、やっぱり理が勝ちすぎると思うなぁ。
Posted by 冷奴 at 2006年07月07日 13:02
おっしゃる通り!
なんの工夫もしてない歌です。
でも、自分としては愛着があるんですよぉぉ。
Posted by まつむらゆりこ at 2006年07月07日 15:35
フラメンコ、憧れのダンスです。朝日カルチャーで見学したこともありますが、動きに体が、特に呼吸器がついていけないと思って、あきらめました。その代り,というのも変ですが、フラに入りました。7年続けています。同じフラ、という言葉で始まりますが、こちらは、ハンドモーションで、自然の姿や、男女の愛情、などを表現します。挑みかかる、強さはありませんが、ハワイの空気を感じながら踊る楽しさを味わっています。お互い、楽しみましょう。
Posted by ぷありりれふあ at 2006年08月02日 10:52
うわぁ、フラダンスも素敵ですねえ。
なんか、海と空と一体になったような、たゆたうリズムってイメージです。

7年って、すごい! 私の先生の口癖は「踊りは長く、細く」。楽しみつつ、頑張ります。
Posted by まつむらゆりこ at 2006年08月02日 16:43
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