2011年06月03日

卵のような

0603egg.jpg

  一粒の卵のような一日をわがふところに温めている
                       山崎 方代


 卵が貴重品だったのは、昔の話。今や「物価の優等生」として長く君臨し続けている――と思い込んでいたのだが、石垣島に来て、少し考えが変わった。というのも、いくつものガソリンスタンドで、「たまごプレゼント」という幟がはためいており、ガソリンを入れる度に卵がもらえるのが楽しみになったからである。
 旅行者として来ていたころは、その幟を見ては相棒と「何だろうね、たまごプレゼントって」「卵くれるんじゃないの?素直に理解すれば」なんてのんきに話していた。しかし、こちらに引っ越してきて、スーパーにおける卵(10個入りパック)の価格が200円前後と高いことを知ってからは、「2000円以上ガソリンを入れると卵が4個もらえる」というサービスがすごく嬉しいものに思えてきた。

E3819FE381BEE38194E38397E383ACE382BCE383B3E38388-thumbnail2.jpg

 千葉のスーパーでは時々、目玉商品として「1パック99円。お1人様1点のみ!!」とチラシに大きく書かれ、勇んで買いに行っていたものだが、それはあまりに安いような気もしていた。どんどん産卵させられる鶏を思うと、どこか後ろめたい思いがする。石垣島では、大体200円を切ると「おお、安い」という感じで、最安値は128円といったところだろうか。これくらいが普通かな、という気がする。
 「一粒の卵のような」という語にこめられた大切な感じは、もちろん価格のことではなく、卵というある種の全きかたちというものから来ているのだろう。そんな「一日」というのは、どんなよいことがあったのだろう。人に話すと壊れたり損なわれたりするような、そんな面もありそうだ。誰にもみせずに「ふところに温めている」ところが、秘密めいて楽しい。
 卵1個を惜しんで食べる日々、方代の心にちょっと近づいたような気もする。最近では、ホームセンターで50円の「給油券」をもらっても、「あそこのガソリンスタンドは卵をくれないからなあ」「やっぱり卵サービスのあるところで入れようよ」などと話す私たちである。

 ☆山崎方代歌集『迦葉』(不識書院、1985年)
posted by まつむらゆりこ at 11:58| Comment(8) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
卵プレゼント…超なつかしいですね〜

上記の写真を見て、一気に少年時代にタイムスリップした気持ちになりました。
おおきに!
Posted by kenken at 2011年06月03日 18:41
kenkenさん、
おお、沖縄本島でも卵のプレゼントはありましたか! 嬉しいものなんですよね〜。
Posted by まつむらゆりこ at 2011年06月04日 09:57
我が家の庭に昼間放し飼いにしたシャモが一羽います。夜明けと共に小屋から出してくれ〜とばかりに合図します。(雌なのでコケコッコーとは鳴かないのですが)眠い目をこすりつつ餌をあげます。そこいら中に糞と砂浴びをするので穴だらけですが、卵も産んでくれるのでプラス、マイナス0かな。(笑)
Posted by コビアン at 2011年06月04日 11:25
コビアンさん、
まあ、シャモが! 生きものがいると暮らしが楽しくなりますね。しかも卵を産んでくれるなんて、いいなあ。
Posted by まつむらゆりこ at 2011年06月05日 10:00
「人間を生んでしまった悲しみよ卵料理はあたたかすぎる」

一人息子の子育てに、心底悩んでいた頃、松村さんのこの句は、私のお腹(子宮あたりかな?)の中にいつもあり、血と肉、時には涙、で、そっと大事に、温めてきたような気がします。

今回の「卵のようなもの」は、「わがふところ」にあるのですね。

身体の「内」と「外」の違いは大きいな・・卵をめぐって、更年期に入りかけた私は、変なことにこだわってしまったのでした。すみません。

Posted by 風のダンス at 2011年06月06日 11:08
風のダンスさん、
「卵」と更年期について、私もいろいろ考えて歌にしたりしました。「卵料理」の歌は、30代につくったものですが、そんなふうに共感してくださっていたこと、とても嬉しいです。「卵」は本当にさまざまなことを考えさせるものだと思います。
Posted by まつむらゆりこ at 2011年06月06日 18:39
 最近読んだ池永陽の「水のなかの蛍」に卵が食えない人が出てきます。オムレツとか卵焼き大好きなのですが、このところ生卵がちょっとだめなんですね。とくに白身が。いったいどうしちゃったんでしょうか。この前3ヵ月ぶりに買った4コ入り卵の最後の1コがかなり賞味期限を過ぎ、ゆで卵にして捨てようかと思ったのですが、その時間もなく、トイレに流してしまいました。ちょっと罪悪感あったなぁ。
Posted by 冷奴 at 2011年06月07日 17:35
冷奴さん、
池永陽の作品、まだ読んだことがありません。面白そうですね。
卵の賞味期限は生で食べられる期限ですから、加熱して食べるなら買ってから1カ月ほどは大丈夫です!(たまには家庭欄の記事も読んでくださいませ)
Posted by まつむらゆりこ at 2011年06月07日 18:05
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:

認証コード: [必須入力]


※画像の中の文字を半角で入力してください。
※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。
この記事へのトラックバックURL
http://blog.seesaa.jp/tb/206671914
※ブログオーナーが承認したトラックバックのみ表示されます。

この記事へのトラックバック
×

この広告は1年以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。