踏み鳴らす足も手拍子(パルマ)も楽器なり十二拍子は血を沸き立たす
フラメンコには、さまざまな曲種がある。それぞれの基本リズムを「コンパス」というのだが、ブレリア、アレグリアス、ソレアなど、12拍で1コンパスとなっているものが多い。3・3・2・2・2というリズムを習ったときは、実にわくわくした。何だか変拍子とシンコペーションが一緒になったようで、体の奥深いところが動き出すような感じがした。
小学生のころの私は、ピアノを習っていたので楽譜は読めたが、音楽の喜びを知らなかった。「4分の4」も「2分の2」も大して変わらないじゃないか、「4分の3」だって最初から順に音符を演奏していくんだから、どこで区切ろうとおんなじようなものなのに、と恐ろしいことを思ったのを覚えている。
本当にリズムというものを楽しくて美しいものだと感じたのは、高校時代にブラスバンドでフルートを吹いていたころだっただろう。それぞれのパートごとに違うリズムを刻むドビュッシーの楽曲などを演奏していると、身震いするほど嬉しかった。ストラヴィンスキーやラヴェルの変拍子は、いつ聴いてもぞくぞくする。
というわけで、生来リズム感の悪い私であるから、踊りもなかなか上達しない。手足を楽器のように使うのは本当に難しいが、音楽に合わせて体を動かす楽しさは格別である。踊りとは体で音楽を奏でることであり、リズムとは音楽の息づかいのようなものなんだなあ、と今ごろになってやっと分かった。
☆松村由利子歌集『鳥女』