いっぽんの軸を持たねば回れぬと言われぐらつき始める日常
回るのが苦手である。フラメンコを始めるまでは、いろいろな踊りを目にしても「ふーん」とあまり熱意なく眺めていたのだが、今やちょっとしたCMの踊りのシーンを見ても、回転が気になる。「おっ、顔の切れがいいねえ」「やっぱ、下半身が安定してるんだ」などと一人で大興奮。くるりと一回転することがどれほど難しいかというのを身にしみて知っただけでも、世界が広がった気がする。
回る、というのは、片足で立って身体を回転させることである。上半身はいろいろな形があり得るが、体の中心を通る軸は常に一本で安定していなければならない。そのためには、背筋や大腿筋がきちんと支えたり引っ張ったりする力を備えていなければダメなのだ。そして、体は回転し始めても顔は正面を見続け、最後の一瞬でぴっと顔を切らないといけない。うーむ、理屈はわかっているのだが……。
ゆうべ、「雨に唄えば」のDVDを見ていて、改めてジーン・ケリーの踊りの素晴らしさを堪能した。上体を斜めにして連続回転するシーンで「ああっ、これってまるっきりケブラーダ!!」、雨の中、傘をさして踊るシーンで「うわ、軸が全然ぶれてないわ、さすが」と、夜中に騒がしいこと、この上ないのであった。
11月の発表会まで、あと2カ月あまり(どうせ見るならフラメンコのDVDの方がいいんじゃ……ということは言わないでほしい)。衣裳は仮縫いが済み、昨日は早々と髪飾りも渡されてしまった。舞台の上でよろけずに回転できるのかどうか、すべては練習にかかっているのだろう。ああ、恐ろしい。
回転(ブエルタ)は一瞬ならず最後まで顔は正面をひたと見据えよ
☆松村由利子歌集『鳥女』
舞台は何とか形にしなければ、と猛練習しているところです。頭では理解していても、まだ体が覚えていなくて……。