2006年09月19日

指先

KICX0919.JPG

 指先まで力を込めよ負荷をかけ負荷をかけ人は美しくなる

 発表会が近づき、先生の指導が週を追うごとに厳しくなってきた。
 先週の稽古中には、「あたしは意志のない手は嫌いなの!」と鋭い声が飛んだ。身がすくんだが、ちょっと嬉しかった。というのも、このところ停滞気味で、間違えずに踊ることを第一に、必死に他のメンバーに合わせて体を動かしていたので、「表現」というところに一歩近づいた叱咤はありがたかったのである。
 日本語で手足というときの「手」は腕全体を指すことが多いが、先生に言われた「手」は「マノ」と呼ばれ、手首から先の動きを指す。マノを除く腕の動きは「ブラソ」という。腕と足の動きをやっとのことで覚えても、最後に手を動かし始めると、全部がばらばらになってしまったりする。
 稽古中に初めて「指を張って! 力の抜けた手はきれいじゃないよ」と言われたのは、いつだっただろう。「こんなところにまで力を込めなければいけないのか」と驚いた。それ以来、フィギュアスケートを見ても、シンクロナイズドスイミングを見ても、「なるほどー。やっぱり手先がきれいだよぉ」と納得している。
 指先まで力を込めて踊るのは、常に凛と背筋を伸ばして生きることにつながるような気がする。気持ちや体が弛緩していては美しくない。つらいことや悲しいことがたくさんあっても、その負荷が人を美しくするのかもしれない。そんな思いを歌にした。
 先生の声がびしびし飛ぶ。「その手は、欲深く、こちらに呼び込むような手なんだよ!」。うわぁ、かっこいい。ぴんと張った指先に、いっそう力を込める。

☆松村由利子歌集『鳥女』
posted by まつむらゆりこ at 09:38| Comment(4) | TrackBack(0) | 情熱のフラメンコ短歌 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
熱を帯び充実した稽古が続いていらっやるようですね〜なぜか蛹を破って伸び出てくる蝶を思い浮かべてしまいました…
フラメンコとは掛け離れてしまうけれど、以前エジプト旅行でベリーダンサーの方に目前で踊られた時、背筋が寒くなるような畏怖を感じました。迂闊に邪な思いを抱こうものなら、惑わされ誘い込まれて喉元を切られてしまうような…考えすぎ?(笑)
神々しく凛と伸びてくださいね。がんばって!
Posted by こびん at 2006年09月20日 09:59
はじめまして!^^私“凛”って大好きです。その言葉に反応して書き込んでじゃいます^^;
指先まで神経をいきわたらせるって大変ですが、それは踊りやスポーツなどその精神は全てのことに通じると思います。

短歌はやりませんが、よろしくお願いします!^^
Posted by ココロ at 2006年09月21日 11:47
ココロさん、はじめまして!
短歌に特にご興味がないのに読んでいただけて、とっても感激です。
「凛」は私も大好き。
どうぞ、また遊びにきてくださいね♪
Posted by まつむらゆりこ at 2006年09月21日 15:59
はじめまして。
学生時代にフラメンコと出会いました。
去年からは短歌も好きになり、つい最近 こちらを見つけました!

熱く、血が沸き立つ思いです。


「鳥女」

発売終了………とありますが、探してみます!!!
Posted by やながわ 亜弥 at 2008年11月19日 23:38
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