そののちの静止に賭けてターンする遅れぬように崩れぬように
中川佐和子
よろけるのである。フラメンコの練習中、体の向きをすばやく変えたり、くるりと回ったりすると、「静止」できずに「よろっ」としてしまう。どうしてこう体のバランスが悪いのか、ほとほとイヤになる。
昨年11月に発表会が行われた。人生初めての舞台だった。直前の通し稽古で間違えたところも本番ではちゃんと踊れたし、小さなミスはいろいろあったが、まあまあの出来だったと思っていた。
ところが!!
先日、発表会の舞台を撮影したDVDで自分の踊りを見て、卒倒しそうになった。踊りのミスだとか形の美しさだとか言う前に、よろけているのである。こんなによろよろしているとは思わなかった。目を覆わんばかりのよろけ具合に、がっくりきてしまった。
だいたい、フラメンコの魅力というのは、大地を踏みしめるところにある。上半身がいかに空に向かって伸びようが、なまめかしく複雑に動こうが、下半身はどっしりと安定している。そこがいいのに、私ときたら海中のワカメのように頼りなく、回転や素早い動きの後に必ず「よろっ」としているのであった。
「そののちの静止」という表現の巧みさには、ぐっと惹きつけられる。理想的ターンの成功率の低いことは「賭けて」から窺え、作者にちょっと親近感を抱く。「遅れ」っぱなし、「崩れ」っぱなしの私であるが、今年は「そののちの静止」を目標に、練習に励もうと思う。
☆中川佐和子歌集『海に向く椅子』(1993年7月、角川書店刊)
ぴたりと決まっていたよ。「うつくしい静止」以外の何ものでもない☆