
あちこちでデイゴの花が咲いている。島の春である。
しかし、内地でも激しい寒暖差のようだが、石垣島でも初夏のような陽気が続いたかと思うと、風が強く吹いて寒くなったりする。ここ数日の目まぐるしい天気の変化に、ふと思い出した一句がある。
春はすぐそこだけどパスワードが違う 福田 若之
1991年生まれという、若い作者である。もう少しでログインできそうなのに、またもや「パスワードが違います」というメッセージが表示されるような、もどかしさ。惚れぼれとするような若さあふれる一句である。
この人の洗練された感覚、耳のよさには、本当に魅了される。
私の特に偏愛する三句。
歩き出す仔猫あらゆる知へ向けて
うららかという竪琴に似た響き
風邪声はうをのうろこのうすみどり
一句目は、猫好きにはたまらないテイストだろう。小さな猫がおずおずと、しかし好奇心たっぷりに歩む様子をこんなふうに達者に写実するとは! 二、三句目はあえて説明する必要はないと思われる。胸がふるえるように美しい。
東日本大震災の直後に詠まれた一句も忘れ難い。
ヒヤシンスしあわせがどうしても要る
この切迫感、ぐんぐん押してくる感じ。「がんばろう 日本」もよいけれど、誰にでも「しあわせがどうしても要る」ことを、みんなでもう一度考えたい。
*週刊俳句=編『俳コレ』(邑書林、2011年12月刊行
いい句ですね!小さなしあわせを感じたり、ささやかな希望を持ちたくなったり…それが信じられるのが春だと思います。
いいですねぇ。こんな若い方の俳句を教えて戴けて感謝です。ヒヤシンスの淡い香りが思い浮かびました。
私もちょっと調べてみました。
強く生きたいと強く思ったんだ雪融け
詩は泣いていられないんだつばめ来る
さえずりさえずる揺れる大地に樹は根ざし
どれも震災後のでしょうかね?若い人が頑張っているのですから、私も頑張らなくてはと思わされます。
春はいろいろなことが始まりそうな予感に満ちていて、わくわくします。希望に満ちた季節ですね!
ミルトスさん、
挙げてくださった福田若之さんの3句、『俳コレ』には載っておらず、制作時期は分かりませんが、震災後の作品のように思えますね。どれも若々しくて、早くこの方の句集が読みたくてなりません。