コンビニに昼来るときに少しだけOLだった気持ちに戻る
前田 康子
不思議な寂しさと華やぎが漂う歌だ。
勤めている人にとって、コンビニエンスストアは頼りになることこの上ない。少々スーパーより割高であろうと、それが何だろう。「私は忙しいんだから」。言いわけとも思わずに、さまざまな食品や日用品を買う。
私も夜遅く帰り道にあるコンビニに寄っては、ヨーグルトやポテトチップスなど買ったものだ。管理職になりオフィスに閉じこもって仕事をするようになってからは、同じビル内にあるコンビニに行くのだけが楽しみ、という悲惨な毎日だった。
ところが会社を辞めると、コンビニに立ち寄ることはほとんどない。1人前の惣菜はおそろしく高く思えるし、ストッキングや化粧品だって、ちょっとスーパーまで足を延ばせば格安で手に入るのだ。
この歌の作者は、2人の幼い子どもを育てている人だ。外出したときに何か忘れ物をしてやむなくコンビニに入った場面かもしれないが、私は何となく、子どもを連れて近所にあるコンビニにふらりと入った場面のように感じる。「会社勤めの頃は、ランチによくこんなお惣菜を買ったわねぇ」「同僚と新製品のお菓子を見つけては喜んでたなあ」……ふっと懐かしく若やいだ気持ちになる傍らで、子どもはしゃがみ込んでおまけ付きのお菓子なんぞいじっている。あの頃の気持ちを自分はまざまざとよみがえらせることが出来るのに、もうそこへは二度と戻れない−−。
コンビニの店内の奇妙な明るさと、作者の翳りを帯びた感情とが、何ともいえない揺らぎを作り出している。
☆前田康子歌集『色水』(青磁社、2006年7月出版)
自分の子ども時代になかったものだから、かえって「おとなのノスタルジー」を感じるなあ☆
「おとなのノスタルジー」とは面白い見方です。チロルチョコの詰め合わせとかあるもんね♪
このような見方があるのですね。
何の考えもなくコンビニを使う私には、
意外なほど新たな気付きでした。
いやー、「気軽」が一番ですよ。
もなママさんも言ってるけど、子ども時代にはなかったものだから、年寄りはつい、いろいろ考えるのでしょう(もなママ、ごめん!)。
実はこの歌とこの話題を家内に話してみたところ、
「うん、よくわかるわぁ。」
としみじみと言っていました。
休みの日に、1本65円のジュースをまとめ買いして、
職場で飲んでいるとか。
私もこういう発想を持たないとなぁと、感じました。
ところで、先日ご案内いただいた、
馬場あき子さんの短歌が、
今朝の朝日新聞の「折々のうた」で紹介されていましたね。
今日は、馬場さんの紹介記事を切り抜かせていただきました。