
もういちど逢うなら空をつきぬける鳥同士でねそしてそれは夏
江戸 雪
夏のエネルギーは確かに、心身に作用する。恋の始まりが夏に多かったのは、そのせいだったのだろうか。
この歌は、過ぎ去った恋をなつかしんでいるのだが、単なる回想ではなく、「もういちど逢う」ことにかなり思いが傾けられているようだ。
「切なくもあの恋は終わってしまったけれど、今度逢うときはお互い鳥になって逢いましょうね。何にも束縛されず、自由に翼をはばたかせて、どこまでも高く二人、飛んでゆきましょう」
けっこう危険なのだ、この歌は。
「そしてそれは夏」と、季節を限定しているところに、ぞくぞくさせられる。作者と、恋の相手にしかわからない「あの夏」を指しているから。
一首だけで、いろいろな空想(妄想?)を楽しむことができるのが、短歌のよいところ。この作者は、こういう美しい飛躍を見せてくれるのが実に巧い歌人である。
☆江戸雪歌集『声を聞きたい』(七月堂、2014年7月刊行)
歌より由利子さんの解説に「ぞくぞくっ」ときた。
ちょうど過ぎ去った恋をなつかしんでいたからかな。
私はもう「もういちど逢いたい」とは思っていないのだけど。
「ぞくぞくっ」と感じてくださって嬉しいです。
この歌の作者も、逢いたい気持ちと逢いたくない気持ちと半々かもしれません。だから、逢うのだったら「鳥同士」と条件を限定しているのでしょう。人間同士で再会してもうまく行かないのは、もうわかっているのだから……。
しかも精神的に落ち着かず、ゆっくり歌を拝見しに伺うことが出来ないでおりました。
でも、歌とか音楽は必要なものですね、人生にとって。とりわけ若い世代にはなくてならないものだろうと、娘を見ていて、又自分を顧みて思います。
一つ前の魚の写真、熱帯の写真らしく鮮やかで楽しく、二つ前の短歌にも心温まる思いをさせて頂きました。ご紹介、ありがとう!
お久しぶりです。相変わらず原稿書きだの何だのに忙殺されております。
少しでも多くの美しい歌、楽しい歌を紹介してゆきたいと願っているのですが、なかなか果たせません。
ともあれ、これからもどうぞよろしくお願いします。