2014年08月17日

それは夏

0817江戸雪「もういちど」.jpg

  もういちど逢うなら空をつきぬける鳥同士でねそしてそれは夏
                         江戸 雪


 夏のエネルギーは確かに、心身に作用する。恋の始まりが夏に多かったのは、そのせいだったのだろうか。
 この歌は、過ぎ去った恋をなつかしんでいるのだが、単なる回想ではなく、「もういちど逢う」ことにかなり思いが傾けられているようだ。
「切なくもあの恋は終わってしまったけれど、今度逢うときはお互い鳥になって逢いましょうね。何にも束縛されず、自由に翼をはばたかせて、どこまでも高く二人、飛んでゆきましょう」
 けっこう危険なのだ、この歌は。
 「そしてそれは夏」と、季節を限定しているところに、ぞくぞくさせられる。作者と、恋の相手にしかわからない「あの夏」を指しているから。
 一首だけで、いろいろな空想(妄想?)を楽しむことができるのが、短歌のよいところ。この作者は、こういう美しい飛躍を見せてくれるのが実に巧い歌人である。

  ☆江戸雪歌集『声を聞きたい』(七月堂、2014年7月刊行)
posted by まつむらゆりこ at 18:32| Comment(4) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
>作者と、恋の相手にしかわからない「あの夏」を指しているから。

歌より由利子さんの解説に「ぞくぞくっ」ときた。

ちょうど過ぎ去った恋をなつかしんでいたからかな。

私はもう「もういちど逢いたい」とは思っていないのだけど。
Posted by スーザン at 2014年08月20日 00:44
スーザンさん、
「ぞくぞくっ」と感じてくださって嬉しいです。
この歌の作者も、逢いたい気持ちと逢いたくない気持ちと半々かもしれません。だから、逢うのだったら「鳥同士」と条件を限定しているのでしょう。人間同士で再会してもうまく行かないのは、もうわかっているのだから……。
Posted by まつむらゆりこ at 2014年08月20日 08:56
年ごとに夏が厳しく感じられるようになり、それとともに恋も自分とは関係のない世界の出来事のように思える今日この頃です(笑)。
しかも精神的に落ち着かず、ゆっくり歌を拝見しに伺うことが出来ないでおりました。
でも、歌とか音楽は必要なものですね、人生にとって。とりわけ若い世代にはなくてならないものだろうと、娘を見ていて、又自分を顧みて思います。
一つ前の魚の写真、熱帯の写真らしく鮮やかで楽しく、二つ前の短歌にも心温まる思いをさせて頂きました。ご紹介、ありがとう!
Posted by ミルトス at 2014年09月01日 15:15
ミルトスさん、
お久しぶりです。相変わらず原稿書きだの何だのに忙殺されております。
少しでも多くの美しい歌、楽しい歌を紹介してゆきたいと願っているのですが、なかなか果たせません。

ともあれ、これからもどうぞよろしくお願いします。
Posted by まつむらゆりこ at 2014年09月01日 23:49
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