2007年05月07日

遊園地

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  観覧車回れよ回れ想ひ出は君には一日(ひとひ)
             我には一生(ひとよ)
                  栗木 京子


 遊園地はかなしいところである。予期せぬ事故が起きたからではない。私にとっては、昔からあまり心躍るところではないのだ。
 遊園地で子どもと遊んだあと、別々の家に帰る−−そういう特殊な親子だった。遊園地の非日常よりも、ふつうに家でごはんを作って食べさせ、絵本を読んで寝かしつける日常の方が私には遠かった。
 この歌は恋の歌であり、観覧車は「回る」ところに重きが置かれている。でも、観覧車は「あっ、今てっぺんだよ!」という状態がほんの一瞬であるのも悲しい。
 先日、福岡に帰省したときに、息子や姪っ子たちと観覧車に乗った。「ああっ、今、この瞬間、私たちが一番上よ!」「これからは転落する一方だね」「おごれる者は久しからず」などときゃあきゃあ騒いで、思いのほか楽しかった。高校生の息子は「祇園精舎の鐘の声、諸行無常の響きあり……」と平家物語の冒頭部分をそらんじてみせて、みんなの笑いをとっていた。
 「大きくなったなあ」と思った。
 早くガールフレンドと遊園地でデートして、いい思い出を作ってくれ。そして、小さいときに母親と二人きりで遊んだ寂しい遊園地の記憶なんか、どこかへやってしまえ。

☆栗木京子歌集『水惑星』(雁書館、1984年10月刊行)
 
posted by まつむらゆりこ at 23:44| Comment(19) | TrackBack(1) | 元気の出る子育て短歌 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
月に一回だけ、週末を父と過ごしていた私です。
まつむらさんとは逆だね〜。

父は母にとって、いい夫ではなかったのだけど、
私にとっては、とてもいい父だったので、
土曜に泊まって日曜の夜に家に戻るとき、
必ず神経性の大腸炎になって、
ゲリピーだった・・・。
そんなこと、思い出しました。

子ども心に理解できることと理解できないことがあって、
そこは体がバランスとってくれてたんだと思います。

しんみりしてるわりにビロウな話ですまんです。

Posted by かくらいゆかり at 2007年05月08日 13:46
息子さん高校生なんですね。こどものいないわたしにはうらやましいです。
観覧車ってそう言われれば人生の縮図ですね。
Posted by 山野いぶき at 2007年05月08日 20:06
私はメリーゴーランドが好き。

子どものころ乗った思い出もないくせに。

どうしてなんだろうな…。
Posted by Lucy at 2007年05月08日 20:15
幸せな生活の中で、幸せな非日常に会いに遊園地に行くのに、それでも、ふとかなしくなる瞬間があるの。

「この幸せな日々も、いつか遠い思い出になる」って思うからかな。

ふしぎな場所ね、遊園地。
Posted by もなママ at 2007年05月08日 20:18
 こんばんわ。
 寂しい記憶ではないと思いますよ。様々な事情があるにせよ、その時には遊園地に行くことが一番の選択だったのではないかと、推察します。きっとその時は、それが一番良かったはずです。
 そんな大切な思い出を、諸々の思いから歪めることはないと思いますよ。良かったことも、たくさんあったことでしょう。その良かった部分を大切にされた方が、良いと思います。
 息子さんにとっても、お母さんと行った遊園地は、良い思い出になっていることでしょう。きっと、そうですよww
Posted by KobaChan at 2007年05月08日 20:29
大好きな、大好きな、一首。
自分と相手との気持ちの温度差が、みごとに表わされていて、多くの人に永らく愛誦されてきた名歌。

「回れよ回れ」というリフレインと下句での対句が、これ以上ないくらい、心地よい韻律を生んでいると思うんです。そして主題が「温度差。」
僕はこの方の、端正な文体と、その理知性に、強く惹かれます。
Posted by 森 at 2007年05月08日 20:41
かくらいゆかりさん、
あなたの話にじーんとしてしまいました。
楽しかったのにおなかこわしちゃう小さなあなたのことを思うと胸がきゅんとします。

山野いぶきさん、
そうですね、子どもの存在そのものが大きな贈りものなんですものね。

Lucyさん、
それは「メアリー・ポピンズ」のせいでは?

もなママさん、
おお、ちょっとポエムな感じですね。

KobaChanさん、
いつもながら、あったかいメッセージをありがとうございます。そうですね、あれはあれで楽しかったんですもの。いじいじしちゃいけないな!

森さん、
私も大好きな名歌なのに、今回はきちんと鑑賞する文章を書かずにごめんなさい。恋の「温度差」って本当にかなしくって、美しい。
栗木さんの本質を的確に指摘なさったコメントに、深く共感しました。ありがとうございます。
Posted by まつむらゆりこ at 2007年05月08日 23:08
観覧車の歌、私も好きです!恋の温度差も哀しいですが、何十年も夫婦やっていて気付く温度差は??観覧車の乗る部分、ゴンドラ?でいいのでしょうか?回っても回っても決して追いつけないし、乗り移れないんですよね。それって心が痛む・・。息子さん健全に成長されているようで嬉しいです。昔の人が言いました。苦労?は決して無駄になりません。温々ぼんくらよりきっといい大人になりますよ!!
Posted by noko-chan at 2007年05月09日 18:41
こちらの観覧車、マリノアでしょうか?
もしそうだったらヤフードームとかも見えるのでしょうか?
夜の観覧車もロマンチックでいいでしょうねぇ♪
福岡に帰りたくなりました。
Posted by あゆ at 2007年05月09日 20:00
noko-chanさん、
「夫婦の温度差」って、深いですね……
「回っても回っても決して追いつけない」「乗り移れない」には、ほとんど泣きそうになっちゃいました。
あったかいメッセージ、本当にありがとうございました。

あゆさん、
当たり! これこそ「エバーグリーンマリノア」です。
ネットで検索したら、頂上からのパノラマ画像(http://www.evergreenmarinoa.com/html/sd01.html)というのがあって、感激でした♪
Posted by まつむらゆりこ at 2007年05月09日 22:29
この栗木さんの短歌、松村さんは『物語のはじまり』の中でも紹介されていますよね。
多くの人の中にある様々な思いを引き出すこの歌は、やはり名歌なのだろうなと思います。
しばらく前に、私のブログでも、この短歌について書いたので、トラックバックさせていただきます。
Posted by 拓庵 at 2007年05月10日 00:05
拓庵さん、
本当にそうですね!
よい歌というのは、いろいろな読みができるものだと思います。
Posted by まつむらゆりこ at 2007年05月10日 01:10
思わず、クラッときちゃうんですよね。
栗木さんの相聞歌には、老若男女を問わずときめかせてしまう、魔法のような力がある、ってそりゃ、言いすぎかも。。

それにしても、古女房だなんておっしゃらないでくださいよ〜。
…としか言えないですけど。
思えば、僕も相聞歌がつくれなくて、それを短歌にしちゃったりしてますね。
(↑ダメじゃん!)
河野裕子さんが「男の相聞も少なくなった。」とおっしゃっていましたが、……ふぅ―、耳が痛いです。
Posted by 森 at 2007年05月11日 20:47
ゆりこさん、こんばんは

やはりそうでしたか!
ネットでパノラマ画像を見ることができるのですね。
すごいっ! 私も感激しました♪
ゴンドラにエアコンが装備されているなんて真夏も快適でしょうね。
次回の帰省でぜひ行ってみたいです。
姉妹でゆりこさんのブログをとても楽しみにしてますよ。
ちなみに、姉のほうです。
Posted by あゆ at 2007年05月11日 22:22
森さん、
私も「クラッと」させる歌が作りたい!!
歌の基本は相聞ですよね♪

あゆさん、
ね、ね、あのパノラマ画像、いいでしょ!
妹さんへもよろしくお伝えください。
Posted by まつむらゆりこ at 2007年05月11日 23:44
あのゴンドラのこのアングル 斜にかまえていても、中の我儘なミーイズムは写しだされず、きどったシーン!!!
出口が開けられず 降りるチャンスも逃してしまうほど臆病で、ただ同じところを何度も何度も回り続ける、終身刑みたいな日常のわたし?
Posted by スマイル ママ at 2007年05月12日 12:37
スマイル ママさん、
いや、「このアングル」とか言われても、ふつーの携帯で撮ったものですから。

「終身刑」というのも、またすごい見立てですね!
私たち、みんな観覧車に乗せられているのかもしれません。
Posted by まつむらゆりこ at 2007年05月12日 14:56
初めまして。
私は娘たちと離れて暮らす母親です。
この情景と歌がとてもよく判ります。

またお邪魔させていただきます。
Posted by ほわほわの森 at 2007年05月16日 09:08
ほわほわの森さん、
コメント嬉しく、切なく拝見しました。
ブログにもお邪魔しましたが、みんなそれぞれ「複雑な環境」なのかもしれません。「共同親権実行中」って、素晴らしい♪♪
Posted by まつむらゆりこ at 2007年05月16日 15:32
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