どこまでが音であるのか一本の指の重さが鍵盤(キイ)になるとき
河野美砂子
ドビュッシー研究でも知られるピアニストの青柳いづみこさんのエッセイ集『ピアニストは指先で考える』(中央公論新社)を読んでいる。
ピアノという楽器は一番なじみがあるが、プロのピアニストの感覚や苦労は、とても想像しきれるものではない。青柳さんのエッセイは、指を曲げて弾くか、伸ばして弾くかという問題(私は「たまごをもつように」と曲げて弾くよう教わった)や、椅子の高さやタイプ、さまざまなタッチの弾き分けなどが具体的に語られていて、面白くてたまらない。 冒頭の一文から魅せられる。
「私の手は、小さい。親指と小指をえいやっとのばしても、ドからレまでしか届かない。ラフマニノフはドからソまで届いたのに。」
私の手は、大きい。ピアノを「弾く」というのでなくて、うーんと伸ばすとドからミまで何とか届く。愛らしい器やらおひな様やら小さなものを愛でる日本においては、大女は背の高さ、足の大きさ、そして手の大きさを恥じて生きるしかないのだが、ピアノを弾くときだけは「大きい手でよかったなー」と思えるのである。
以前、中村紘子さんのリサイタルを聴きに行き、「ああ、ピアノの鍵盤がもう少し小さかったら、あるいは小さいタイプのピアノが別にあったら、どんなにこの方のテクニックや奏法が生きることだろう」と口惜しいような気持ちになったことがある。手の小さい女性ピアニストたちは、ただ黙々と練習し続けるのだろうけれど。
この歌の作者もピアニストである。指が鍵盤を押すときの精妙な感覚をとらえた名歌だと思う。
☆河野美砂子歌集『無言歌』(2004年、砂子屋書房)
狭い書斎の一隅を占めて邪魔と思わぬでもないけれど、やはり捨てられない。
私もピアノの音が大好きです。
ドビュッシーやラヴェルが特に好きなのですが、最近シューマンやリストもやっぱりいいなあ、と思うようになりました。
幻想的で透明な光のような音楽、、私も好きです。彼らの曲からは、いつも「モーヌの大将」というフランスの小説が思い出されるのですが。
好きな作曲家は数多いますけれど、ピアノだとショパンとベートーベン(って、あまりに違うかしら?)が最も好きかなぁ、私は。。
相性も悪く、ふりむいてもくれないのに、宮廷貴族には奉仕を忘れないみたいなさみしさで、心は魅了されないままです。。。
それなのに、おしゃべりな中年女の歯のような飴色に鍵盤は変色しても、なぜか捨てられず、せまい部屋に堂々と鎮座しているのです。
私はショパンもベートーヴェンも大好き♪
スマイル ママさん、
あー、同じですね。つれない存在ですよね。でも、長く付き合えば、それなりの結果が出るのでは……。
お二人ともちゃんとお部屋に鎮座しているところがすごいなー。うちは電子ピアノだもんなぁ……。
指ももう動かないくらいに長い間弾いていないので、ハノンから始めないとダメですが。
松村さんは今も弾いているのですね。
ひえぇぇ〜〜、憧れのいづみこ様と同級生だった、ですって??
いやー、世の中ってホント狭いです。
いつかコンサートにご一緒しましょうよ!
くららさん、
いえいえ、私も時たま思い出したように、十八番のワルツを弾くくらいで……。
ピアノが弾けるということは、素晴らしいことですね。
私は残念ながら弾けません。
でも練習してみようかなぁ。
ご案内の歌は、音と指とのつながりを
表現されているのが興味深いですね。
「自分の指が鍵盤に・・・」
きっとピアノを弾かれる方のみが知る、独特の感覚なんでしょうね。
私は弦楽器全般に全くさわったことがありません。
ギターを弾きながら歌が歌えるなんて、素晴らしい♪
私も習いたいなぁ。
松村さんはピアノを弾かれるんですね。
ピアノが弾けるひとって、無条件で「スゲーッ。」って思ってしまいます、たとえ、弾く曲が「猫ふんじゃった」の速弾きだろうと、ショパンの「ノクターン」だろうと。
河野さんの一首。
この歌の韻律におけるポイントは「鍵盤(キィ)」の一音でしょう。
変な例えですが、猿の鳴き声とおなじで「キ」の音は金属的でするどいので、際立って聞こえます。
だから、この一音は、ピアノの鍵盤の音を表すのには、ぴったりなんです。
この歌だけで言っても、河野さんの、一音一語への非常に緻密な目配りを、ひしひしと感じさせられます。
ところで、僕は昔トランペットをやっていたんですけど、僕の場合は唇がマウスピース(トランペットに息を吹き込むところ。取り外し可能。)に触れるときを想像すればよいでしょうか。
トランペットも結構むずかしくて、高音が出せたときは、短歌でいえば、内容に適した言葉が出た時に似ています。
でも、トランペットは歌になりますかね?
ピアノがカ行音なら、トランペットはパ行音?
お宅のお嬢さんたちの方が数倍お上手ですよ!
森さん、
おお、トランペット!
高校時代は吹奏楽・命♪だったので、マウスピースの感覚、わかりますぞ!!
(私はフルートを吹いていました)
いつの日か音楽を歌で表現したいなあ、と夢見ています。
今度共演しよっか♪
といっても、心の花の歌人にはあまりお会いしたことがなく、かりんや短歌人の方は多少、存じ上げているという、おかしなヤツです。
弦楽器ならば、チェロが好きです。チェロを弾く人も素敵に思える。現実には重くて大変だろうと思いますが、チェロケースを持って歩いているだけでも、あの人チェロ弾くんだなあと思って、憧れてしまいます。
弾く時のヨーヨーマは色っぽいと言ったら、私の周囲では総ブーイングでしたが、私はマさん、好きです。カザルスも好きですが、マイスキーよりマです。
サックスも好き。とくに、昔のスタンダードと言われるジャズの。「スリーピーラグーン」は普通トランペットで演奏するのかもしれないけれど、テナーサックスのもgood!
楽器ができてもできなくても、音楽は素晴らしいですよね。
音楽のような短歌が書けたらいいなあ、と思います。