2007年07月13日

アンダルシア

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 ひまはりのアンダルシアはとほけれどとほけれどアンダルシアのひまはり
                   永井 陽子


 6月は、スペインを旅行するベストシーズンと言われる。特に、私が昨年訪れたセビージャは、「アンダルシア地方のフライパン」と呼ばれるほど7月、8月は暑いらしく、6月に訪れるのがよいとされている。5月末から6月末にかけて、あちこちで一面のひまわり畑が見られるのも大きな魅力だ。
 アンダルシアはスペイン最南部の地方で、逢坂剛『カディスの赤い星』の後半の舞台となるカディス、ヘレス酒(シェリー酒)の産地として知られるヘレス、アルハンブラ宮殿のあるグラナダなど、地名としてなじみのある都市が多い。フラメンコや闘牛、白壁の家々といったイメージは、まさにこの地方特有のものといってもよい。
 永井さんの歌は、つぶやくような優しいしらべが何とも魅力的。遠いスペインの、それも最もスペインらしい地方「アンダルシア」を思って、たゆたうような気分が伝わってくる。意味が先行する歌の多い私は、このやさしい韻律に「詩歌って、本来はこういうふうに、しらべを楽しむものなんだ」とうっとりさせられる。
 ところで、ある友達に「アンダルシア、って響きは、本当にやわらかくて素敵だよね」というと、彼は全く同意してくれなかった。「いやー、何かまがまがしい、っていうか、ぞくぞくするというか……」「???」。話が全然かみあわない。よくよく聞いてみると、彼にとっての「アンダルシア」は、何といっても、シュールレアリズムの映像詩「アンダルシアの犬」なのであった。ああ、あの眼球が、アリが、ピアノの鍵盤が……。異性とは、アンダルシア以上に遠い存在なのであろうか。


☆永井陽子歌集『モーツァルトの電話帳』(1993年11月、河出書房新社)
posted by まつむらゆりこ at 11:02| Comment(10) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
「優しいしらべ」って、本当そうですね。
声にだしてなんども歌いたくなるような。
上の句と下の句がシンメトリーになっていて
視覚的にもおもしろいと感じました。
とおいところにあって物理的には手が届かないんだけど、アンダルシアの乾いた大地であかるい日を浴びて堂々と咲き誇るひまわりを、フラメンコのような情熱でもってぐっと自分の方に引き寄せるような力強さを、わたしはイメージしました。
Posted by yoyo at 2007年07月13日 23:24
アンダルシアは赤土だそうですね。
スペインという風土性からしても、「ひまわり」と「アンダルシア」を情熱の象徴として詠んでいる、と思いました。
この歌はきっと、とおいアンダルシアのひまわり畑へのあこがれなんですね。
情熱的な風景を思い描きつつ、優美な韻律を奏でてしまうのが、永井さんのマジックといえるでしょう。
初句の「ひまわり」から、ふわーって浮いて循環して、また「ひまわり」に着地する感覚がたのしい歌。

Posted by 森 at 2007年07月14日 04:49
yoyoさん、
視覚的な面白さについてご指摘くださって、ありがとうございます。
「ひまはり」は本当に美しくて、旧かなっていいなあ、と思ってしまいます。

森さん、
そうなんですよ! 乾いた大地のはずなのに、永井さんが詠うと、やんわりと瑞々しいものが加わって、何ともいえない味わいになります。
Posted by まつむらゆりこ at 2007年07月14日 12:14
(ひまはり)〜(とほけれど)
旧かなって、優しい響きですね♪

でも、うたの内容もさることながら、字面からアンダルシアへの、
せつないメッセージを、むしろ強く感じます。
Posted by スマイル ママ at 2007年07月14日 17:39
回文のような一首。アンダルシアのひまはりに何を見たのか、何を想定したか・・?とほけれどとほけれどのリフレインによって憧れの気持ちを昂揚させていく・・そんな一首と読ませていただきました。
<ひまはり><アンダルシア><とほい>の語彙のみにて立つ一首。ごちゃんと言い過ぎの私には憧れです。
Posted by noko-chan at 2007年07月15日 13:25
日本語ってきれい。
旧かなも雰囲気があるし、でも、もしこれが向日葵と漢字でよんであったら、また全く違うものになるのでしょうね。
あらためて、日本語の素晴らしさに気づかされた歌ですね。
Posted by kaorin at 2007年07月15日 21:05
スマイル ママさん、
このせつなさがどこから生まれ、どうやって読む人に伝わるのか、本当に短歌って不思議です。

noko-chanさん、
私も歌に意味を詰め込みすぎるのです!
もっとことばと戯れ、響きを楽しまなければなりません。

kaorinさん、
「向日葵」もいいですよね♪
あでやかな感じ!
Posted by まつむらゆりこ at 2007年07月15日 21:20
うん、確かに「アンダルシア」はセクシーな響きがする。

行ったことのない地にはロマンを感じるね。

でも、「異性はもっと遠いもの」なら…

男と女って、隣にいても、エキゾチックなロマンなのかもね(笑)。
Posted by Lucy at 2007年07月15日 22:47
おはようございます。
旅行や地理にのことに、私は全く詳しくないのですが、記事の中にある「アルハンブラ宮殿」を拝見し、その昔、ギターの師匠が弾いてくれた名曲「アルハンブラ宮殿の思い出」を思い出しました。私は、その名曲を弾けないまま今日にいたっておりますが・・・。
「ひまわり」は明るいお花でいいですね。お祝いの花束の中などに、ちょこっと小さい「ひまわり」があったりすると、それこそ本当に華やかになりますね。
ご案内の短歌からは、とても雄大で、そして懐かしいような気持ちを感じます。kaorinさんがおっしゃるように、日本語ってとっても綺麗ですね。ひまわりのように^^
Posted by KobaChan at 2007年07月16日 09:59
Lucyさん、
「アンダルシア」は客観的にみて、やわらかくってきれいな言葉だと思うなあ(「アンダルシアの犬」はコワイよ)。

KobaChanさん、
そういえば、スペイン関係のギターの名曲って、いろいろありますね!
「なつかしさ」も永井陽子さんの歌の特徴なんですよ♪
Posted by まつむらゆりこ at 2007年07月16日 13:01
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