2007年07月27日

アルバイト

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  こんなところでだけアルバイトといわないでほしい あなたは何したの今日      山内 頌子

 長らく会社に勤めたから、契約社員やアルバイトの女性たちの誠実な仕事ぶりはよく知っている。そして、彼女たちがどんなに不安定な立場にいるか、どれほど薄給で雇われているかも。
 作者は若い。そして凛として働いている。この歌は、たぶん来客か部外者の前で、「この子はアルバイトだから……」のような屈辱的なことを言われた状況を詠ったのだと思う。正社員と同じように働かされ(給与からすれば、それ以上に働かされ)、そんなことを言われる筋合いはない。
 自分は安泰な立場にいて、さげすむように「アルバイト」と言った人物に対して、作者は激しく攻撃したい気持ちにもなったかもしれない。けれども、そこを抑えて「あなたは何したの今日」とやんわりと収めたところが見事だ。
 激しい怒りは、そのまま形にしても人の心に届かない。こんなふうにやわらかく、品よく述べることで、読む者にもわなわなと震えるような憤りが伝わってくる。五七五七七を大きくはみ出した破調の迫力というか、どこで切れるか分からない呪詛のような詠いぶりに魅了される。
 この歌を読んで、かつて私の職場にいた数人のアルバイトの女性たち一人ひとりの顔を思い浮かべた。電話の応対が実にしっかりしていて、笑顔のいい人ばかりだった。

☆山内頌子『うさぎの鼻のようで抱きたい』(ながらみ書房、2006年12月出版)

posted by まつむらゆりこ at 15:56| Comment(5) | TrackBack(0) | 働く女たちへ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
ご案内の歌と記事を拝見し、どんな場面であれ、人を大切に思えるようになりたいと感じました。
ご案内の歌の、歌われる側の人にならないよう、気をつけたいと思います。
意識しなくても、人を大切にする振る舞いが出来るようになりたいものです。
Posted by KobaChan at 2007年07月27日 21:03
あ、すごく共感☆あたしも「非常勤」だから♪

そんな日常の鬱憤さえ歌にするって、すごいことだね。愛とか恋とかじゃなくても歌になるんだ…。

歌にしたら、何でも昇華できちゃうような気がする。歌詠みって素敵だなあ☆
Posted by Lucy at 2007年07月27日 21:50
KobaChanさん、
「歌われる側の人にならないよう」と考える時点で、もう既にKobaChanさんは大丈夫です!

Lucyさん、
共感してくださいましたか!
こういう口惜しい気持ちを味わった経験がある人の、どんなに多いことでしょうね。
Posted by まつむらゆりこ at 2007年07月27日 22:24
2,3度目の書き込みをさせていただきます。わたしも「非常勤」で高校の講師ですが、さっき、ようやく7日間の夏季講習を終えたところです。一日80分で謝礼は1万4280円でした。小テスト作りを含む準備に一回2時間以上かけました。この高校では、講師に定期試験作り等もさせるので、仕事は専任並み、保険も年金もなく、時給は高校生のアルバイト並み(以下)になり、奴隷のようだ、といつも「ぶーぶー」言っています。
うちの専任には、松村さんのように、パートに同情してくれたり、評価してくれたりする、心優しい人は、残念ながら見当たらず、使えるだけ使おう、という態度です。この「ぶーぶー」をこの方のように短歌に昇華できればすーっとするだろうなあ。
  フリーターやニートが問題になっていますが、この歌に共感する若者も多いのでは?
  ただ、「あなたは何したの今日」のところは、強すぎる言い方だと批判する人もいるのではないでしょうか。。。
  一ヶ月足らずの夏休み、それでも、こんなに夏休みが取れるのって教員だけですよね、短歌や俳句に親しみたいです。
Posted by 山野いぶき at 2007年07月30日 15:01
山野いぶきさん、
職場の悩みはそれぞれですね。
ご指摘の通り、「あなたは何したの今日」に反感を抱く方もいるようです。
制度の問題もあるけれど、いろいろな働き方があることへの理解と尊重が大事なのではないかと思います。
Posted by まつむらゆりこ at 2007年07月30日 18:08
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