子が愛づる恐竜の骨わが呼ばふ鳥彦の羽うつつにしなふ
今野 寿美
幼稚園から小学校低学年くらいの男の子を大別すると、「乗りもの」派と「生きもの」派に分かれる。「乗りもの」派は、列車や自動車、飛行機などをこよなく愛し、「生きもの」派は、昆虫や恐竜に胸ときめかせる。どちらに属するにせよ、彼らはたいそう情報収集と個体分類の能力に長けている。自分の興味のある対象を図鑑や道端で発見した際、幼い彼らが瞬時に微細な差異を見分け、いとも正確に判別することにはただただ驚かされる。
こうした特徴が、決して同年代の女の子に見られないことは長年の謎だ。最近は、鉄道マニアの女性「鉄子」さんの存在も知られるようになったが、電車の中で母親の手をひっぱり、「ねぇねぇ、あれは、何線? あれはぁ?」としつこく訊ねているのは決まって男の子である。
この歌の「子」は、「生きもの」派のようだ。恐らくは息子だろう。「鳥彦」は「鳥」を親しんで呼んだ名である。「彦」は「日子」であり、「姫」に対する語。恐竜の大好きな男の子と、鳥の好きなお母さんを並べて詠いながら、恐竜の生きた時代から現代に至る年月をはろばろと感じさせる気持ちのいい歌だと思う。ちょっとずるいのは、「子」も男の子、「鳥彦」も男の子なので(恐竜は??)、お母さんが男の子ばかりに囲まれている甘やかな感じがあること。
私の息子も「生きもの」派だった。高校生になった今、古生物学者になる夢はあきらめたが、彼の携帯メールのアドレスは、肉食恐竜ヴェロキラプトルの学名、Velociraptor mongoliensis で始まる。
☆今野寿美歌集『鳥彦』(雁書館、1995年8月刊行)
我が家は現在、人間3「彦」とねむ彦、はろ彦…やっとチチ姫が入ってきましたが、「彦」だらけ、あまやかさとは程遠いかも…
ええーっ、「植物」派の男の子もいるんですね!
「一輪車を押させたら日本一の幼稚園生」って、渋っっ……。
「ねむ彦」「はろ彦」さんは、ネコさんたちですね♪
幼き日の自分を振り返りますと、どちらかと言えば「乗りもの派」だったと思います。父親が車を買い換える時に貰ってきたカタログを、随分と長い期間、眺めて遊んでいた記憶があります。そういえば、自分の娘にも、「列車の歌」シリーズのビデオを買って来て、見せていました。女の子には受けなかったのかなぁ^^
「彦」は「日子」で、「姫」に対する語だったのですか。はじめて知りました。
ということはぁ、私もぉ・・・^^
おお、「乗りもの」派でしたか。
私の弟もそうです(40歳過ぎた今も!)。
○○彦、って名前としてとても好きです。
高校時代、文芸部の後輩に「文彦」という名の人がいたのですが、みんなで勝手に(Fを取って)「海彦」と呼んでました♪
特に車への「萌えー」的な独特の感覚は、
まだ持ち続けています。
今でも愛車に名前(スペイン語)をつけて、話しかけてますし。あははは。
息子さん、古生物学者にならなくて良かったですよ。今、ポストが無くて大変だから。でも、古生物好きのままではいてほしいなあ・・・
化石と言うと未来(だったかな)の紺野万里さんの「過飽和・あを」という歌集ご存知ですか?この方は短歌研究新人賞を原子力発電所をテーマにした作品でおとりになったのですが、歌集を読むとかなりの量の化石掘りの歌がありました。
見上げたる化石の壁のなまなまと日本海いまだ無き日のやうに
息つめてたがねを当つる黒き層この九ミリが宙への出口
だしぬけに頁岩めくれ化石なきことにいくらか安心もする
大人になってからは、一時、航空会社と縁のある仕事をしたり、プライべートでは、フェリーに車を載せて遠方まで旅行するということもずいぶんやりました。
物心ついた頃からの「運輸」族かもしれません。
一方、昆虫や恐竜には、さしたる興味を持ったことはありません。
「乗りもの」派と「生きもの」派を分けるものは、親の遺伝?親の関心?あるいはその子の先天的なもの?果たして何なのだろうかと気になるところです。
ちなみに、女の子はみんな人形遊びをするものだと思っていたけど、興味ない子もいるのね。そして「女の人」にその名残は…?(笑)
「アウトドア遊びまわり派」ですか!
いやー、文章を面白くしようとして、不正確なことを書いてはいけませんね。とっても納得しました。コメントありがとうございます♪
かたつむりさん、
かっこいい車に「萌えー」という女の子もまた、かっこいいものです!
うむうむ、「乗りもの」派のご発言、深く味わいました。
森尻さん、
紺野万里さんの歌は、新人賞を受賞なさったときから大好きです。歌集も愛読しています♪
拓庵さん、
あっ、典型的な「乗りもの」派の男の子だった方からのコメントですね! ちょっと、ほっとしたりして……。
Lucyさん、
女の子も男の子もいろいろ。バリバリの「乗りもの」派だった私の弟も、結構お人形で遊ぶのが好きでしたよ(無理やり一緒に遊ばせていたコワイ姉ありき)。
私も典型的な「のりもの派」です。
通勤や旅行で列車に乗るときにも、無意識のうちに型式をチェックしたりします。
さらに同じ型式でも「これは初期型」「これは後期型」などと微細な差異を見分けることまでしてます。
鉄道、自動車、航空機など広いジャンルを対象としますが、どうも好きになれない「のりもの」があります。それは「戦車」です。
あの形状といい、何より使用目的を考えると好きになれないです。
子供のころから現在まで、好きでいる「のりもの」は「オート三輪」です(年がバレますね)
はじめまして。「無意識に型式をチェック」というところがすごいです。通勤のときも???と感服しました。
「戦車」だけは好きになれない、というのも同感です。人によっては「究極の実用的な形は美しい!」と戦闘機を愛でたりしますもの。
「オート三輪」って平和そのものの形ですね!