2008年01月18日

風邪

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  三七度七分の熱にうろたえる夫を叱りて氷かち割る
                   鷲尾 三枝子


 昨日まで風邪で二日半ほど寝込んでいた。「あっ、来るな」と思った午後からどんどん具合が悪くなり、頭痛と悪寒に襲われた。
 熱を計るのもしんどくて、薬を飲んでだいぶ気分がよくなってから計ったところ、ちょうど「三七度七分」だった。微熱をちょっと超えたくらいで大したことはないが、平熱の低い人にとってはつらい体温だろう。
 この歌の作者は、熱を出した夫にぴしぴしと「それくらいの熱で何うろたえてるの!」なんて言い放ち、氷嚢に入れる氷を手早く割っている。かっこいいなあ、と思う。情が薄いのではない、ちゃんと氷を割ってくれているのだもの。幼い子どもたちが高熱を発した真夜中、この作者は何度となく胸を痛めては病院に駆け込んだり、夜が明けるのを待ちわびたりしたに違いない。そういう、「発熱に関してのキャリア」も思わせる歌である。
 「夫を叱りて」に込められた貫禄と愛情がいい。夫と対等に家を切り盛りし、子育てに家事に頑張ってきたであろう女性の矜持が、ずんと伝わってくる。そして、やっぱり「三七度七分の熱にうろたえる夫」には、可笑しくなってしまう。たぶん日頃とは違った、頼りなげな表情なのだろうと思うからだ。
 私の母もそうだったが、この作者のような人は自分の熱を体温計で計ったりしない。熱が何度あろうと寝込んでなんていられないから、「ああ、いま三八度くらいあるかな」なんて思いつつ、すべきことを片付けてしまうのだ。「三七度七分」という半端な数字は、おろおろする男性たちへの皮肉のようにも思える。

☆鷲尾三枝子歌集『まっすぐな雨』(短歌研究社、2004年1月刊行)
posted by まつむらゆりこ at 09:39| Comment(16) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
母は強し。妻も強し。「三七度七分」という半端な数字は、おろおろする男性たちへの皮肉のようにも思える」。男は弱し。

同じように叱られながら看病された経験者として。感謝を込めて・・・

お体お大事に!
Posted by 濱徹 at 2008年01月18日 10:22
おはようございます。熱はもう下がったのですか?二日半ほど風邪で寝込むとは、かなりきつかったでしょう。「発熱に対してのキャリア」に私の体験が重なるところがあり、コメントさせていただきます。

幼い子供というのは、急に高熱をだしたり、さっきまで元気に遊んでいても、急に「ママ〜、気持ち悪い」と言って吐き気をうったえたりするもので、それは病院の診療時間外であることもしばしばあります。

子供が赤ん坊の時、夜に急な発熱に驚いて、夫をたたき起こし車で救急病院に行った事があります。しかしそこへ連れて行ったとしても、急を要する患者さんが次々と救急車で運ばれてきたりして、すぐに医者(小児科専門医ではない)にみてもらえることはなく、何時間も待っていたことがあります。ですから、自宅で思いつく処置(あたたかくして、子供の脇やおでこを冷やす、水分をあたえるなど)をして翌日、かかりつけの小児科に連れて行くことが多かった様に思います。

姉妹でかぜがうつってしまい、ふたりが治ったころに母親の私にうつってしまうこともありましが、実家も遠くて頼る人も近くになく、本当に困ったことが何度もあります。そんな時でもやる事がたくさんあり、市販の風邪薬を飲んで、数時間横になるだけで自力でなおしていました。

幼い子供は、母親頼りなのでいろいろと世話しますが、夫が風邪で37度台の熱をだしても「お医者さんのところに、自分で行って、薬もらって飲んで寝とき!」という感じです。ちょっと冷たい妻ですかね?どこも似たりよったりではないでしょうか?まあ、おかゆつくったり、ポカリスエット買ってきたりはしますけれどね。由利子さんも、ゆっくりと休まれて、しっかり治してくださいね。お大事に。
Posted by あゆ at 2008年01月18日 11:04
濱徹さん、あゆさん
ご心配くださって、どうもありがとうございます。ちょっとぶり返した感じがあるので、また布団に戻ります。でも大したことはないので、どうぞご安心ください。
あゆさんの、てきぱきとした対応が目に浮かぶようです。私もさっさと寝て、自力で治さなければ!
Posted by まつむらゆりこ at 2008年01月18日 11:39
「うろたえる」夫と叱って「かち割る」妻との対比がおもしろいですね。
この寒さで風邪はつらいですね。一昨年夫が風邪をこじらせ、肺炎になりかけたのに懲りて、暮にわたしが風邪をひいたときはちゃんと抗生物質を飲みました。今また夫は風邪気味ですが。。
薬はしっかり飲んでどうぞお大事にしてください。
Posted by いぶ at 2008年01月18日 17:27
お風邪!くれぐれもお大事に。そのさなかにもこうして書かれておられて頭がさがります。前回不慣れで唐突な質問になりました。メールはしておりませんのでアドレスが書けません。歌歴は短く自己流です。記事を拝見して訪問いたしました。また寄せてください。この微熱の歌は可笑しいですね。そして巧みな構成。半端な数字、かち割る。夫婦円満の秘訣はどうやら・・・うふふ。我が家も同じなので笑ってしまいます。
Posted by chiho at 2008年01月19日 01:16
いぶさん、
夫の姿まで見えるのがこの歌の面白さですよね。

chihoさん、
笑っていただけて嬉しいです。歌はいろいろな楽しみ方がありますから、楽しくて笑ってしまう歌もどんどん紹介したいです。

(今回の風邪は長引きます。皆様くれぐれもお身体お大切に!)
Posted by まつむらゆりこ at 2008年01月19日 09:27
松村さん、風邪をひかれたとのこと、
くれぐれもお大事になさってください。
ちょうど今、今シーズン一番の冷え込みとか。
温かくしてくださいね

「三七度七分」でおろおろ・・・
いえ私などは、「三六度九分」でアウトです^^;

やはり健康第一ですね^^
Posted by KobaChan at 2008年01月19日 11:38
私も正月に風邪をひいて寝込みました。気管支が弱いので、いったんひくと喘息のように咳き込んで夜も眠れません。
寝込んだと言っても、炊事と洗濯は這うようにしてやりました。夫は食事が出来上がるのをテレビを見ながら待ってるだけ。
「あなたが寝込んだ時は私はあなたに何をしてあげている?それを考えたらうどんくらい作ってよ!私は病気でも安心して寝てることも出来ないの?」
というふうに結婚以来10何年、何度いさかいになったことか。冷蔵庫のものが腐るのがもったいなく、風呂の残り湯を捨てるのがもったいなく、何もしない夫に見切りをつけ炊事洗濯するしかない私。
風邪をひいた私が、健康体の夫を叱っています。
Posted by のぶこ at 2008年01月19日 19:59
KobaChanさん、
ご心配くださって、ありがとうございます。「健康第一」との言葉、身にしみました。いい文章、いい歌も、元気だからできる部分があります。早く治さなくては。

のぶこさん、
まあまあ殿方というものは!! おちおち寝てもいられませんね。お正月さぞおつらかったことでしょう。
私も気管支が弱くて、咳に苦しむたちです。咳をすると体力を消耗するんですよね。お互い気をつけましょう。
Posted by まつむらゆりこ at 2008年01月19日 21:58
ご紹介くださった歌と、由利子さんの文章に共感し、自分の思いと重なり思わず長いコメントになってしまい、すみませんでした。反省しきりです。
子育て真っ最中の平凡な主婦で、短歌とは無縁の生活を送っている私ですが、「元気の出る子育て短歌」では、読んでいて励まされたり、考えさせられる事も多く、短歌を身近なものに感じる様になってきました。そういったきっかけを与えてくださってありがとうございます。これからも楽しみに読ませていただきますね。
Posted by あゆ at 2008年01月19日 23:19
もう、風邪は治りましたか。男の人は一般的に病気に気弱ですね。自分の時は案外弱音をはかないのに、私が時々入院したりすると、オタオタしていた夫を思い出しました。
なにげない生活の中の心の揺れを感じさせる歌に心ひかれます。
しっかり治してください。
Posted by 会留府 at 2008年01月20日 20:39
あゆさん、
反省なんて! これからもご愛読いただければ嬉しい限りです。こちらこそよろしくお願いします。

会留府さん、
ご心配くださり、ありがとうございます。
「なにげない生活の中の心の揺れを感じさせる歌」を、これからもご紹介したいと思います。
Posted by まつむらゆりこ at 2008年01月22日 16:41

今、私の風邪の予防法は松村さんの著作を読み解くことです。
(風邪の好物である「こころのユダン」が発生しません・・)

 月一度新幹線に
    飛び乗りて子に会いにゆく
             レプリカの母

この一首、私にとって-273.15℃。感性の振動が完全にとまりました。

ここ十日間ぐらい、解凍できず気になって仕方がなかったのですが
昨日、「梵我一如」という解凍ソフトでサクサクとできました。

自分なりに読む解く快感が ジワ〜 っと。嬉しくて。

次のステップは「言葉に信頼を感じる」状態です。
新聞記事の内容が、すこしずつ、少しずつ、わかってきました。

愛用していた「フムフムナルホド」という便利であり安易な横文字解凍ソフトをゴミ箱に
放り込むことが、できそうです。

お体、ご自愛を。
Posted by ひろし at 2008年01月23日 19:36
ひろしさん、
風邪の予防法が拙著だなんて、感激というか驚きです! 何かのヒントにしていただけたなら、望外の喜びです。
私の風邪はまだ完治していません。みなさまもどうぞ気をつけてくださいね。
Posted by まつむらゆりこ at 2008年01月23日 21:41
どうぞお大事になさってください。健康第一です(お互い若くないし!)。縛られるけれど有給休暇が取れる勤め人とは違うのですから、お気をつけて。

うちのこも中学生になって鼻風邪くらいでは部活までやってくるようになりずいぶん楽になりました。
Posted by もりじり at 2008年01月24日 12:13
「おまったせぇ〜n(^0^)/」
「特製のおかゆですぅ 熱いからフーフーして食べて頂戴」

「これは、おろし林檎とレンゲ蜂蜜。」
「これはそれから明日と明後日の分です」

「何? え〜っと、明日は」
「ブエルタ風・白菜と豚バラ肉のフラメンコ煮」
「明後日は 
 サパテアード風ウドンのラスゲアード煮込み」

「トレモロチックに火にかけて召し上がれ」
「宮殿を見上げながら食事している気分になって

 風邪バイバイ って ならないか アハ」

 早く、なおりますように・・・・。
Posted by ひろし at 2008年01月24日 13:12
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