葉が石に足跡が石になるときの泥がそのまま泥であること
紺野 万里
化石というものは、子どもも大人もわくわくさせる。それ自体の形状も素晴らしいが、気が遠くなりそうなほど長い年月かけて作られたことに魅力があるからだろう。
化石になるまでには、さまざまな条件が満たされなければならない。この歌は、木の葉や地面の上に残った恐竜の足跡が、たくさんの偶然の重なりによって化石になった不思議さ、そして、化石をつくった泥自体は泥のままであることの不思議さを詠っている。
私は科学部の記者になるまで、足跡の化石があるなんて知らなかった。歩幅や体重のかかり具合から恐竜の体の構造が推測できるだけでなく、歩くスピードや姿勢などもわかるのだから面白い。また、骨格化石と違って恐竜の生活も推測することができる。例えば、集団で生活していたのか単独で生活していたのか、また湿地や乾いた砂地など棲息していた場所の特徴もわかるのだ。
写真は、化石そっくりに作られたチョコレートである。チョコレート製のレプリカ、と言った方がよいかもしれない。つくばにある産業技術総合研究所の、地質調査総合センターが所蔵する化石標本などに基づいて作られたもので、アンモナイト、巻き貝、三葉虫、古生代のシダ状の葉をもつ植物、肉食恐竜スピノサウルスの歯の5種ある。5月初めから国立科学博物館などで販売されている(http://www.geobox.jp/shop.html)。
研究所に勤める知人から、このチョコレートのことを聞いて買ったのだが、本当に精巧な出来栄えだ。本物の化石をもとに作られているので、シダの葉脈やアンモナイトの殻の巻き方まで、実に素晴らしい。5種類のチョコレートが1個ずつ入ったセットには、地質調査総合センターが監修した小さな解説書が収められており、それぞれの型をとった化石の産地、標本番号まで記されている。
懇切丁寧に「観察のポイント」も書いてあるのが嬉しい。実は、食べてしまってから「ああっ、巻き貝のトゲの並び具合なんて見てなかった!!」と後悔した……。箱は食べてしまったらペンケースにもなるという、すぐれものである。そして、何よりも、ちょっぴりビターなチョコレートの味がいい。明治製菓監修のチョコレートを使っているだけあって、チョコ好きの人も十分満足させる味だと思う。
☆紺野万里『過飽和・あを』(短歌研究社・2002年8月)
☆お知らせ
「短歌研究」6月号に「遠き鯨影」30首が掲載されています。
今後とも御贔屓に・・・
巻貝とシダを食べました。うーん、コーヒーとよく合います!
冷奴さん、
チョコ好きでいらっしゃいますか! ぜひ、ご賞味を。
「理」のある歌もまたよいものです。この歌では「化石」という言葉を使っていないし、やわらかに仕上げられていると思いますが。
きっと、賞味期限まで眺めているでしょう。
ところで…
葉っぱや足跡は、その時代が思い浮かび…泥は泥のまま、今も踏みしめられ…石炭や石油は、今を生きるのに使われる…。
いろいろ…ですね。
ポストにすてきなおくりものがとどきました。
おてがみかきます。
化石に封じ込められた、歴史と時間を一緒に食べるようで、太古の時代にしばしタイムスリップできそうな気がしてきます。
次に、上野かお台場に行く時には、ぜひ買い求めようと思います。
そうなんですよぉ……と言いつつ、巻き貝とシダを食べてしまい、三葉虫を狙っている私です。
かくらいゆかりさん、
ご無沙汰しています。またそのうち、ゆっくりと!
拓庵さん、
ぜひぜひ国立科学館か、日本科学未来館でどうぞ! 九州では阿蘇火山博物館でしか入手できないというのは、残念ですよねえ。
と、言うのは冗談ですが。
この巻貝のビカリエラ、確か岐阜県産なんですよね。実は取材されたSさんの地元なので、元化石少年らしく、ものすごい思い入れなのですよ。
紺野さんの歌集を読むと化石堀の歌がたくさん出てきます。化石堀って不思議なものでテレパシーでもあるのかしらって思いますよね。(私はからっきしダメ(T_T))
『語り出すオブジェ いつも、そこに短歌』の上梓、おめでとうございます。
机に置いて、読む日が来るのを楽しみにしています。
『かりん』5月号の連作で詠んだ仕事と受験勉強の両立生活は現在も継続中です。
気がつけば、最後に歌を詠んだのは2月。。。
試験が終わったら、一番に松村さんの本を読みます。
『かりん』の歌会にも積極的に参加したいです。
松村さんの旺盛な創作意欲に刺激されて、今夜も勉強をがんばります。
では!
化石掘りにもセンスが必要だという話、面白いですね!
ふなばしこうじさん、
拙著を楽しみにしてくださっているとのこと、嬉しいです。
受験勉強、がんばってください!
遅ればせながら今日『短歌研究』6月号を読みました。
・六月の鯨うつくし墨色の大きなる背を雨にけぶらせ
は悠々として美しく「遠き鯨影」にふさわしく巨きな詠いっぷりが素晴らしかったです。
他の歌は時事風な味わい。
さすがに時事的センスの鋭さは群をぬいていて、シニカルな歌いっぷりは知的でピリリとした味は格別でした。
また最後の老いについてのまなざしはこれからもずっと形をかえて詠われていくのだろうと思いました。先回と趣が変わっていて変幻自在ぶりな作風に感服。
「短歌研究」お読みくださって、ありがとうございました。ろこさんの好みは、「ガルガンチュア」かな、なんて思いましたが。
丁寧に鑑賞してくださって、本当に嬉しいです。
某国の民に読ませたら焚書、禁書扱いになりそうな歌いっぷり!
その一首前の「どんぶり鉢」も同じく。
鯨幾千、飴煮する鍋を買いに行くのが大変!
まったく、松村さんたら!!!!!
太っ腹!巨きな人ね!
ど〜んと気持ちが大きくなりました!
やっぱり、あれは気に入ってくださいましたか!
読む人の感覚をくらくらさせられたらな、と思って、作ってみました。大きさに関する感覚って、自在に変えられるところが面白いと思います。