2013年03月25日

物語のはじまり

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 人生には、いつでも初めてのことが起こる。
 先日、中央公論新社の編集者から、拙著『物語のはじまり―― 短歌でつづる日常』が絶版になることが決まったというメールが来た。会社を辞めた翌年に出した、私にとっては自費出版でない初めての本だった。愛着も深い。文庫にならないかなぁ、とひそかに願っていたが甘かった。人生初の絶版である。
 この本が出て、フリーライターとして食べてゆく、という私の新たな「物語」も始まったのだと思う。

  物語から逃れるという物語 女よ靴を脱ぎ捨てなさい

 刊行した2007年から、早くも6年がたった。私自身も少し変わったし、自分が以前に書いた文章を見て、「ほほぉ、こんなことを考えていたのか」と驚くこともある。最初の本への愛着は愛着として、新たなものをどんどん書き続けるしかない。
    *            *            *
 というわけで、この本を読んでみたいという方に格安でお分けしたいと思います(定価は1890円ですが、送料込みで1000円に)。手元にあるのは約40冊なので、先着順にします。
 『物語のはじまり』は、さまざまな現代短歌をテーマ別に鑑賞したエッセイ集です。「働く」「恋する」「育てる」「老いる」など10章で構成されています。
 ご希望の方は、このブログのコメント欄にお名前とご住所を書き入れてください。コメントとして掲載されることはありません。ご送付先をメモして削除します。
 4月初めには数日間留守にしますので、その間にご連絡いただいた方へお送りするのは、少し時間がかかるかと思いますが、ご了承ください。どうぞよろしくお願いします。

   *『大女伝説』(短歌研究社、2010年5月刊行)
posted by まつむらゆりこ at 15:52| Comment(5) | TrackBack(0) | エッセイ集 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年01月29日

アメリカ

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  こんがりとパンが飛び出すトースターあの日アメリカは輝いてゐた
                   山田 公子


 仕事で1週間ばかりアメリカへ行ってきた。テキサスとニューメキシコ、2つの州だけの旅である。「ここはどこ?」と思うほど、スペイン語のアナウンスとメキシコ料理店があふれていた。
 アメリカというのは、近くて遠い国だ。子どものころは身近に感じていたが、おとなになるにつれて分からない部分が増え、とてつもなく遠く感じることもある。国際社会が複雑になり、日米関係も変化し続けているから、当然といえば当然なのだが、一抹のさみしさがある。
 1月21日付のUSA TODAYには、大学1年生を対象にしたアンケート調査で、「経済的に裕福になること」が大事だと考える人が78・1%に上ったという結果が掲載されていた。1969年の時点では、同じ質問に対してそう回答したのは42・2%だったという。逆に「人生で大切な意義を得ること」が大事だと答えたのは、1969年では84・9%、2009年では48・0%という結果だった。回答者の学生のうち、4・5%の父親は雇用されておらず、このアンケート結果には厳しい経済状況が反映していると見られる。
 帰国して買った『ルポ 貧困大国アメリカU』(堤未果著、岩波新書)の第1章には、学費の上昇や大学間格差、拡大する一方の学資ローンに苦しむ学生たちの実態が描かれている。学資ローンには消費者保護法は適応されず、不良債権化するローンも少なくないという。読んでいるだけで、息苦しくなってしまう内容だ。
 この歌の「トースター」は、オーブントースターでなく、「パンが飛び出す」タイプである。きつね色に焼けたトーストが飛び出す勢いが、1960年代あたりのアメリカの元気のよさと重なる。小学生だった私はベトナム戦争のことも知らず、「トムとジェリー」や『ゆかいなホーマー君』『クローディアの秘密』のアメリカこそがアメリカであると信じていた。
 この歌の作者も、当時の明るく豊かなアメリカのイメージを、自分の幼年時代や青春と重ねてなつかしんでいるのだろう。歌が作られたのは、まだ9・11が起こる前だ。「あの日」は二度と戻らない。

☆山田公子歌集『日曜日のフライパン』(本阿弥書店、1996年11月)
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2008年05月26日

『語りだすオブジェ』

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 2冊目のエッセイ集が出版されました。
 前の本は「働く」「恋する」など10の動詞で人生を区切る趣向でしたが、今回は「スカート」「体温計」「はちみつ」「FAX」「剃刀」など身近なもの、45項目を詠った歌を紹介しています。それぞれの章を「恋するクローゼット」「もの思うキッチン」という具合に、場所で分けた構成になっています。章の扉ごとに写真を入れた、おしゃれな本に仕上がりました。
 2004年から2年にわたって、ウェブマガジン「風」に連載したものに、大幅加筆した内容です(半分以上が書き下ろし)。前著と同様、私の愛唱してきた歌ばかり取り上げています。短歌にあまりなじみのない方にも、これから短歌を始めたい方にも、お楽しみいただけるのではないかと思います。
 今度の本は、あまり書店に並ばないと思います。もし内容を確認なさりたい方は、ウェブマガジン「風」(http://kaze.shinshomap.info/series/tanka/01.html)をご覧いただければ幸いです。

 ☆『語りだすオブジェ  いつも、そこに短歌』(本体1700円)
     本阿弥書店 .03−3294−7068


  *amazonなどでもご注文いただけます!
posted by まつむらゆりこ at 22:46| Comment(21) | TrackBack(8) | エッセイ集 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年01月07日

『物語のはじまり』

 初めてのエッセイ集が出版されました。
 「働く」「食べる」「恋する」「産む」など10のテーマごとに、私の大好きな短歌を紹介しています。
 格調高い「名歌鑑賞エッセイ」でなく、作者である私の子どものころの思い出や新聞記者時代の経験を交えた(このブログに載せているような)へんてこなエッセイです。でも、私が折々に愛唱してきた歌の数々を、もっと多くの人に伝えたいという気持ちで書きました。
 どの歌も優れた作品ですから、敢えて私が下手な説明を加えなくてもいいことは重々承知しています。「こんなことを読んで面白がってくださる方がいるかしら」と心配でもあります。
 今の私の心境は、芦原すなおさんの『青春デンデケデケデケ』のラストシーンで、主人公、ちっくんが東京に向かう列車の中で心につぶやく台詞そのものです。
 「いとしい歌の数々よ、どうぞぼくを守りたまえ!」



posted by まつむらゆりこ at 22:49| Comment(26) | TrackBack(11) | エッセイ集 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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