2010年12月10日

寒さ

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  陽光が地上に割れる音のしてこの冬いちばんの寒い日となる
                        菊池 良子


 12月9日付けの八重山毎日新聞の新聞に、こんな記事が載った。
「石垣島地方は、大陸から入り込んだ寒気の影響で8日の最低気温が14・8度と、平年を3・4度下回る、この冬一番の冷え込みを記録した。街中では、長袖を重ね着する市民や観光客の姿が目立った」
 うーむ、14・8度で「この冬一番の冷え込み」なのである。実は、その前日、夕方のローカルニュースで、地元のアナウンサー2人がこんな会話を交わしていた。
「明日の予想最低気温は14度です」
「(うわ、という表情で)寒いですね!」
「(悲しげに)14度ですからねえ」
 東北や北海道の人が聞いたら、怒ってしまうのではないかと心配してしまった。
 他県から沖縄へ移り住むと、だいたい最初の冬は「あったか〜い」と嬉しくなり、寒がっている県人をあきれ顔で見る、というパターンらしい。そして2年目の冬からは、寒く感じるようになるというのだが、私はなぜか早くも20度を切ると「さむっ」と思うようになってしまった。順応性の高さなのか、もともと軟弱者なのか……。
 そんな中、6月にお隣さんからいただいたバナナが、ついに第1号の花を咲かせ、小さな実ができた。冬のバナナは夏に比べると実が小さいというが、かわいくてならない。花房ができてから120日くらいたたないと食べられないというから、楽しみに待とう。
 冬が快適なのは、昆虫諸君の活動がめっきり減ることである。湿度も低いので、あまりカビやサビの心配をしなくてよい。虫が減ったせいであろう、わが家のヤモちゃんことヤモリの諸君の姿を見ることが少なくなったのは、少しばかり寂しい。
 この歌の「陽光が地上に割れる音」というのは、ふつうに読めば、地面の水たまりが凍って、朝の光を鋭く反射している光景だろう。誰かが踏んで氷の割れる音がして、寒さを余計に感じさせる……。しかし、そうではなく、実際には聞こえない音を鋭敏な作者の耳がとらえた、と解釈してもいいかもしれない。ぴしりと緊まった大気に「割れる音」を感じても、妙ではないと思う。英語のcrisp は、晩秋から冬にかけての乾いた冷たい大気の状態も指すし、ぱりぱり、かりかりした食感のことも指す。私の好きな言葉である。

☆菊池良子歌集『河』(1996年3月、短歌新聞社)
posted by まつむらゆりこ at 07:59| Comment(14) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
耐性というか順応性と申しますか、感じるということは本当に複雑でたよりない。
一度自らをあらゆるものから遠ざけ極限状態にすれば、今現在がとても幸せと思えるのでしょうか...
本題からはなれてしまいました。お許しください。
Posted by スマイル ママ at 2010年12月10日 12:27
菊池さんの歌はおそらく直喩の表現、鋭敏な松村さんの受けた印象は暗喩、そんなふうにも思えました次第です..(^^)
Posted by tokoro-11 at 2010年12月10日 16:16
スマイル ママさん
本当に感じ方というのは相対的なもので、頼りないんですよね。
コメント、とても心にしみました。

tokoro-11さん、
やっぱり氷の歌ですかね!(照)
それにしても、八重山毎日新聞の「この冬いちばんの寒い日」って可笑しいでしょう?(まだ12月に入ったばかりだし…)
Posted by まつむらゆりこ at 2010年12月10日 17:28
 本日、ことしの漢字に選ばれたのは「暑」。あの夏からいくらもたっていないのに、師走もはや10日。今日の東京は寒いです。初の南国の冬をお迎えになり、いろいろ見えるモノもちがうのではないかと……。
Posted by 冷奴 at 2010年12月10日 17:55
冷奴さん、
今年の漢字は絶対「漏」だと思いましたけれどねえ……。私自身の今年の一字を選ぶなら「島」です♪
Posted by まつむらゆりこ at 2010年12月10日 19:23
お疲れ様です・・・
沖縄で14度って相当寒いですよ〜住んでいる人にとっては深刻ですよ〜自宅に暖房器具が一切ないトコが多いですからね〜我が家もそうでした。暖房器具・・・こたつやストーブなんて大人になって生まれて初めて見ましたよ〜
Posted by 中村ケンジ at 2010年12月10日 21:59
ヤモリさんいなくなって寂しいですね。
本土のヤモリは捕まえると甘噛みしたり四カ国麻雀したりするのでかわいらしいんですが、そちらでも甘噛みというレベルでしょうか。
私は会津の山猿ですが、気温の変動で急に14℃とかになったら涼しいではなくやっぱり寒いですよ。
まあ会津は福島県で南東北というらしく北だか東だか南だかわかんないところで、鉄幹の東西南北に西だけ欠けているところなので、北東北(敢えて例えば斗南とか)北海道の方はわかりませんが、たぶん同様だと思いますよ。
Posted by 重方 at 2010年12月10日 23:38
わ!バナナって
さすがっすね。
14度に寒がるあなたの様子が目に浮かぶようだわ。
“島”があなたの今年の一字なら、ワタシの一字は“恋”かな〜。
あ〜、会って話したいよ!
早く、上京しておくれ、ムフ。
Posted by つよこ at 2010年12月10日 23:41
ご無沙汰しております。「陽光が地上に割れる音」。なんとまあ素敵な表現でしょう。とても気に入りました。
ところで先月末に遅い夏休みを取ってドイツ西部のヴッパタールへ行ってまいりました。昨年急逝したピナ・バウシュのお墓参りと観劇が目的です。運悪く欧州には記録的寒波が襲来しており……滞在中も早朝目覚めると氷点下9度なんていう日もありました。雪で閉鎖となる空港も相次ぎ……数日遅れたら帰国できなかったかもしれません。いやはや石垣とは別世界ですね。
Posted by おやくすみん at 2010年12月11日 03:44
中村ケンジさん、
おー、沖縄県人の言葉は心づよいですね。うちにも、暖房器具は千葉から持ってきた遠赤外線のヒーター1台しかありません。

重方さん、
ヤモリをそこまでかわいがっていないので、甘噛みするかどうかは不明。近所の小学生の女の子が手にのせて遊んでたので、聞いてみます。

つよこさん、
わお! 今年の一字は「恋」ですって?(息子への、じゃなくて??)来年ぜひ再開いたしませう。

おやくすみんさん、
ピナ・バウシュのいない世界の寂寥感をひしひしと味わっていらっしゃることでしょう。今年のヨーロッパは寒いんですよね。ご無事で何よりでした。
Posted by まつむらゆりこ at 2010年12月11日 08:45
東京から仙台に転勤になった時、本当に寒かった。同時に青森から転勤して来た人は暖かいと言ってました。我が家のタイヤは早々にスタットレスに変えたのですが、雪に慣れている人は、ずーっと後迄普通のタイヤでした。そして下から雪が舞い上がる地吹雪も初体験しました。冬はバナナの出来る所にすみたいなぁ。
Posted by コビアン at 2010年12月11日 16:34
コビアンさん、
なるほど〜、青森から仙台にいらした方が「暖かい」とおっしゃったことに感激しました。いま自宅の寒暖計は21℃を指していますが、私、なんでこう着込んでいるんでしょう!
Posted by まつむらゆりこ at 2010年12月11日 17:33
陽の光からもまた、何とも言えないような
素敵な「音」を感じることが出来るのですね。
あえて、「聴く音」ではなくて、「感じる音」なのですね^^
Posted by KobaChan at 2010年12月12日 20:13
KobaChanさん、
音と光を重ねた感覚、いいなあと思います。たとえ、この作者が意図しなかったとしても、そう読んで楽しめたことを感謝したいです。
Posted by まつむらゆりこ at 2010年12月13日 08:02
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